空模様

「お待たせいたしました。ナポリタンとたまごサンドです」


「あ!ありがとうございます!」


彼女は、お店の端で流れているテレビを観ていた。


「なんか面白い番組やってました?この時間通販番組ばっかりですよね」


「はい。まさに通販番組でした」


「チャンネル、変えますか?」


「いえ、このままで大丈夫です。意外に面白いんですよ~!」


本当に楽しそうに、そう答えた茗花さん。

視線を戻した先に映っていたのは、ピアスだった。


「やっぱりピアス可愛いなぁ…」


今度は少しだけ切なそうに、彼女はそう零した。


「ピアス、開けないんですか?」


その表情に惹き込まれるように、気が付いたら聞いてしまっていた。


「う~ん、開けたいんですけどね。ちょっと…」


「…あぁ~、職場とか、タイミングとか、色々ありますもんね。すみません。立ち入ったことを聞いてしまって。お料理、冷めないうちにどうぞ!」


慌てて話を逸らした。情けなかった。

聞かれたくないことだってあるだろうに、土足でズケズケと踏み込むところだった。

いや、踏み込んでしまった。


だけど、そんな僕を気遣うように、彼女は再び口を開いた。


「全然!大丈夫ですよ!いやぁ~、痛そうだなぁって。それだけなので。勇気出ないんですよね」


そこまで言って「いただきま~す!」と、ナポリタンを食べ始めた。

そこには先程の切ない表情はなくなっていた。


「ごゆっくりどうぞ」


キッチンへ戻りながらふと見上げた窓の先は、真っ白い空が広がっていた。

空一面を覆う雲に負けないように、太陽がその向こう側から精一杯光を放っていた。

わざとらしいほどに、眩しかった。

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