無機質な瞳

筋目鯛

読み切り

彼女はその無機質な眼で僕を見つめる

マグカップでのみものを飲みながら。


彼女の柔らかな髪、しかしその柔らかさとは違う

冷静な透き通った瞳。僕は彼女のそのまっすぐな瞳に恋に落ちた。


今日もその恋した瞳で僕を見つめる。


しかし、今はその瞳にときめきを感じない。


彼女のその透き通った瞳は時が経つごとに

とても無機質なものに感じた。


その瞳はまるで僕への無関心さを表しているようで

胸を締め付けられる。


彼女はスマホを手に取り、

表情を一つも変えずスマホを弄る。

まるで、目の前の自分になんか認識してないように。


もっと興味関心を示してくれてもいいじゃないか。


「...ねぇ。」


「何?」


僕は顔を背けながら少し拗ねたような返事をした。


「最近見つめても照れなくなったね。」


「へっ??」


間抜けな声が出てしまった。


意外だった。


確かに以前はその恋した瞳を直視できず、見つめられるとつい

慌てて眼を逸らしていた。


今では拗ねるように視線を逸らすようになったが。


彼女にそんな些細な変化を読まれていたのか。


「あの初心な感じ好きだったんだけどなぁ...慣れってやつかなぁ。」


調子を狂わされた。

実はちゃんと見られていたと思うと急に恥ずかしくなってきた。


彼女は笑いながら言った。


「あ、その顔...。」


実は向こうの方がちゃんとこっちを見ていたのだ。

何かそれが悔しくてつい


「照れてねぇよ!」


子供の様な意地っ張りなセリフを言ってしまった。


そんな姿に彼女は余裕のある笑顔を向けこちらにやってきた。

何か瞳には柔らかな輝きを感じる。

そして、隣に座り肩をつけてきた。



「まあ、照れなくなるまではそばにいてあげるよ。」



なんか、顔が温かくなった気がした。

今日はお酒の周りが速いせいだ。

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無機質な瞳 筋目鯛 @Kin_Mefish

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