第4話 謎の少女
全速力で走る。
大通りに出ることに成功したが彼は止まらず走り続ける。
人にぶつかったり、全身の筋肉は痛みを訴え、肺は酸素をもっとよこせと暴れていた。
それを全て無視して走る、全身全霊で走り続ける。
それでも無限に走れはずもなく限界が来て速度を緩めて電柱に寄りかかる。
息を切らしながら後ろを確認、あの男はいない。
「よかったぁ〜助かった〜〜」
安堵しその場に座り込む、数秒だった後に周りから冷ややかな目線を向けられていることに刻夜は気づく。
「あっ、すいません」
そう頭を下げつつ、人の迷惑にならないよう動こうと思ったが、疲労のせいか足が動かない。
ついには警察官が近寄ってくる。
「君、そんなところにいると迷惑だろう?」
そう困ったものを見るかのように優しく話しかけてくる警官。
「あっ、ごめんなさい、すぐにどき…」
瞬時に立とうとするが、今さっきまで自分が求めていた存在に話しかけられていることに気づいた。
「そそ、そうだ!!そのあっちの路地で人が殺されてました!!!魔術師とか魔槍とか言ってるフード付き黒マントの変態が!」
必死に警官に伝えた、警官は目を鋭く細め少し表情を硬くし
「な…君、それどこで見たの?」
現場の詳細を聞いてくる、
「ついてきてください!こっちです!」
さっきまで動かなかった足は驚くほど早く動いた、まるで水を得た魚のようだ。
「あっ、君落ち着きなさい!」
警官が追いかけてくる。
(これが落ち着いてられるか、あのイカレ野郎が街歩いてると思ったら、怖くて眠れねぇ上に………ーーーーーあの子も死んだことが確定したわけじゃない!!!、今すぐ駆けつければ間に合うかも!)
走っていくとあっという間に現場到着
「で?誰が誰に殺されたのかな?」
そこには男も血まみれの女の子もおらず、あんだけぶちまけられた血だって血痕すらも残さずに消えていた。
「いや、確かにここで……………」
一人つぶやいたが、警官は胡散臭そうな目でおれを見てこう言い放つ。
「まぁ何か見間違えたということで…」
無慈悲にも警官は去ってしまう
(あれは幻だったのか?)
そう納得しようとしたが肩の痛みがそれを否定した。
一人で途方にくれていたら、後ろから不意に声をかけられた。
「あり?君こんなところで何してるの?」
よく考えたら、さっきまで殺人が起こっていた場所にいるのは危険だということに今更気づいた刻夜は声をかけられた方から急いで離れた。
犯人は現場に戻るとよくいうし、警戒しながら声をかけてきた輩を観察した。どうやら女の子らしくさっきの男でないことに安心した。
「別に、ちょっと落し物を探してたんだよ」
無難な言い訳をするが、彼女は心底信じてなそうに返答をする。
「へぇ?落し物ねぇ?」
正直に話したいと考える、しかし本当の話が一番嘘くさい。
(このクソ暑い中魔術師とか魔槍とか寝言ほざくフード付き黒マント着た中年のイカレポンチが見えない槍で女の子を惨殺した?)
そんなこと言ったら俺の方こそ暑さに頭をやられたと思われてしまうだろう、事実は小説よりも奇なりとはよく言ったものだ。
そう考え込んでいたら、またもや彼女に不意を突かれた。
「ふーん、私はここで怪しげな男が人を殺してて、君はそれを目撃してしまい、口を封じようと男に不思議な武器で肩を刺されて、必死に大通りに逃げ込んで警官に助けを求めたけど、証拠は何一つ残ってなくて、イタズラ認定受けてしまい呆然としていたのかと思ってたよ〜」
「なっ!?」
まるで見てきたかのように言い当てられて驚愕する時夜。
その反応が心底面白そうにケタケタ笑う少女。
彼女の笑い方に恐怖を覚えた時夜は改めて相手を観察する。
茶髪のショートカット、目はバッチリして鼻筋も通っており、腰はしまって胸は平均より少し上といったところ、年は自分と同年代に見える。
服装は他校の夏服だろうか?全体的に活発そうな美少女だ。
時夜は疑念が晴れず問い詰める。
「なんでそんなこと知ってる!もしかしてお前さっきのやつの仲間なんじゃ……」
彼女は吹き出しながらこう返してきた。
「ハハッ、いやさっき君大通りで叫んでたじゃん、覚えてないの?」
(言われてみれば、緊急事態だったので声が大きかったかもしれない)
そう思い出し、赤面する時夜。
しかしまたもや彼女は刻夜を動揺させてきた
「仲間じゃなくてどちらかというと関係者ってところかな〜」
いまいち要領を得ない彼女の言葉に時夜は自身の疑問を解消するべく、相手の真意を図ろうとする。
「それってどういぅ……」
時夜は言い切る事が出来ず、そこで意識は途切れた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます