召喚女子(ミストレス)は服を脱ぎ、童貞男子(ウィザード)は乳を揉む!
@ninaku
第1話 『おっぱい揉んでもいい?』
俺の名前は大灰触(おおはいしょく)。
頭脳明晰。スポーツ万能。そして自分で言うのもなんだが十人中十人の女子が振り向くようなヴィジュアルを備えている。
誰もがうらやむような完全にして無欠な高校二年の男子――それが俺だ。
そして今日俺は放課後、後輩のとある一年女子から校舎裏に呼び出されていた。
人通りの無いその校舎裏にて、俺とその女子生徒が向き合っている。
地味だが愛らしい背の低い女子生徒は顔を赤らめて、呼び出した相手である俺を見つめていた。
「それで……話って何?」
俺は何も言えずにいる彼女に甘く、やわらかくもハッキリとした口調で言ってやった。
その女子生徒はぴくっ、と小動物のようにかわいらしく身をふるわせた後、震える口元が言葉を紡ぐ。
「あ、あああ、あの……その……わっ、私……大灰先輩の事が好きなんです!!」
「――へえ。ありがとう。嬉しいな」
俺はそう言いながら、俺へ愛の告白をしたその女子生徒の方へゆっくりと歩み寄ってゆく。
「え……?」
「――それなら、俺の頼みを聞いてくれないか?」
俺はその女子生徒の耳元で吐息と共に甘い声で囁いた。
「ん……ぁんっ……は……はい」
上気したその女子生徒は嬉しさのあまり考える事を放棄したように、口だけで答える。
そして俺は、
「じゃあ……――君のおっきいおっぱい揉んでもいい?」
「――――はい……って――え?」
先手必勝! ぽよよんっ。
「おお。な……何てことだ。高一なのにこんな……こんな……容量を……け、けしからん!!」
もみもみもみもみもみもみもみもみっ――――――!!
「い……いやあああああぁぁぁぁぁ――――!!!!」
その女子生徒は校舎中に轟くほどの断末魔をあげ、胸をつかんでいる俺ごとぶんぶん!と体を左右にふった。
それに堪らず、俺はその女子生徒の膨らんだおっぱいからつい手を離してしまった。――しまった!! 久々のいいおっぱいだったのに!!
(まだまだ! まだこのおっぱいを逃してたま――
「こンの馬鹿アニキがぁぁぁぁぁぁぁっっっっ――――!!!!」
ふと俺の背後から先ほどの断末魔を超えるほどの女の大声が轟いた。俺は声のほうへ振り返る。
「だれ――――?」
振り返った目の前には、猛然向かってくる何者かの足裏があった!
「おびぃぃいいいい――――!!」
それを見たが最後――俺は自分でも訳のわからない叫びを上げながら真後ろにふっとんでいた。
「ほら、そこのアンタ!! 泣いてないですぐ逃げなさい!!」
俺のすぐ傍からキンキンとやかましい女の子の声が響く。
――全く。人の顔面を足蹴にしておいて、なんて失礼なやつだ。こいつには他人の意思を尊重しようと言う気はまったくないのか?
そのまま俺は目をぱちぱちさせ、顔面でぐりぐりと動かされる女の足首をがしっ!と掴む。
「ま、まだ起きようとするかぁ!! このっ!! このぉっ!!」
「なぁ、こころ。もう俺の顔を踏むのをやめてくれないか? あの子はもう追わないから」
「……しっ、信じるわよ? ホントに追わないのね? 嘘でしたーなんて通用しないからね?」
そして、その俺がこころと呼んだ女はゆっくりと踏みつけていた俺の顔から足を避けた。
――ああ、逃がすには惜しいおっぱいだったな。それにしても何度も確認しすぎだろ。信用無いのか俺って。
「どういうつもりだ。こころ。学校も終わったのに、どうしてお前がこんな所にいる?」
背中を隠すほどに長く黒い髪を大きな赤リボンで纏め、ポニーテールにした少女――愛忠(まなただ)こころは腕を組み毅然とした態度を保ったままきっぱりと言い放つ。
「お兄ちゃんがまたセクハラしないように見張ってたのよ!」
その少女、こころはその小学生のような背丈も起伏も少ない小さな体で仁王立ちになり、俺の前で怒鳴り散らすように言う。
「『お兄ちゃん』? まいったな幻聴か? 俺は今まで大きいおっぱいには手を出しても危ない薬には手を出してないつもりだったが」
「大丈夫。お兄ちゃんが例えトリップして、どう言おうとこころはお兄ちゃんの妹なんだから」
確かにこころのいうとおり、厳密に言えば俺たちは同じ父親で母親が違うだけの異母兄妹にあたる。
俺はこころの前で手をひらひらさせ、降参を表すジェスチャーをした。
「…………わかったわかった。それで、その『妹』のこころよ。わざわざ俺の顔面にドロップキックしてまで伝えたい用件はなんだ?」
にこーっと笑ったこころは俺を見上げてくる。その微笑みは底知れぬ恐怖しか見えなかった。
「お・兄ぃぃぃ・ちゃん? 昨日も……こころ言ったよね? こんど学校の女の子にセクハラしたら許さないって」
「ああ、そんな事もあったな」
俺は涼しい顔で答える。
昨日、別の女子の胸を触りセクハラを働いた俺はこころ立会いの元、オシオキと言う名目で全身をロープでコンブ巻きのように拘束され掃除用具のロッカーの中に五時間も監禁されたのだ。
そしてこころはロッカーの中の俺へ「セクハラしたら許さない……許さないよ……絶対に……絶対に……」と、洗脳するように何度も何度も何度も囁きかけていた。
――ま。その甲斐なく今日も俺は息をするように女の子へセクハラをしてしまったのだが。
おっぱいを触る事はもはや、俺にとって呼吸に等しい。いや、もはや呼吸だ。俺の生命活動だ。
「それじゃ、こころはそんなエロエロお兄ちゃんに次はどんなオシオキをすればいいのかな?」
こころの小さく細い人差し指が俺の胸板につん、と触れ、艶かしい動きを持ってそれはつーっと、俺の臍(へそ)の方へ降りてゆく。
それにつれて俺の全身がぞわぞわと粟立ってゆく。
まずいな。ここはオシオキレベルを出来るだけ下げる為に、俺が考えうるだけの非道なオシオキをあえて提案するか。常識人なら「いや、そこまでは流石に……」と言って、その提案よりはレベルを落としてくれるかもしれない。よしやってみよう。
「俺をダンボール詰めにして、内戦中の国へ直送(おく)るのはどうだ? 実は俺、海外旅行はした事がないんだ」
瞬間。触れていたこころの人差し指はドスッ!! と音をたて俺の腹に強くめり込んだ。
「ぬるい」
「はい」
こころの目は完全に据わっていた。俺は最高レベルを言ったが、それでもレベルが低すぎたのか。
こころの審判に口を挟む余地は無い事を俺はこれまでセクハラを働いてきた経験で知っていた。
初めのオシオキは説教。次にビンタ。そしてその次に五キロの鉄アレイでの殴打。
そしてまたその次に百キロバーベル、釘バット、果てはモーニングスターとなってゆき、
こころは次に俺へ何をするのか。やがてこころは口を開きそこから俺への審判が下される――
「次は焼却炉だから」
(――――)
おおよそ血を半分分けた妹が言うとは思えない言葉に俺は戦慄すら覚える。
間もなくこころは罪人を運ぶ看守のような冷静さで、左手だけで俺の首根っこを掴んで俺の体を容赦なく引き摺った。いやあぁぁぁ、たすけてぇぇ。
小学生のような体つきのこころにどこにそんな力があるのか、どれだけ俺が体を左右によじってもこころの手は俺の首根っこを掴んだまま離さない。
「あー。そういえば、お前まだあんなのはいてるのか?」
途端に、こころは先ほどまでの邪気が抜けたような可愛らしい声を出す。
「……? 何の話?」
「いや、お前高一にもなって『くまさんパンツ』じゃ体育の着替えのときに誰かに馬鹿にされたりしないのか心配でな」
俺は先ほど顔面を足蹴にされていた時に見えた光景を思い出す。
偶然、目を開けた時に見えてしまったのだから仕方ない。仕方ないといったら仕方ないのだ。
この法治国家、故意でなければ許される変態行為もある。
「ばっ……――――ばかぁ!! このばか兄!!」
金切り声のようなこころの羞恥の声が校舎中に再び響く。
こころにばしばし頭を叩かれ、それによって俺の頭がケーキ屋のまえにあるバネ首のマスコット人形のように激しく上下する。
「エロエロなお兄ちゃんは今日は焼却炉の中で丸一日過ごすもん。こころ決めたもん」
「そうか、なら今のうちに俺の焼き加減を決めた方が良いのかな。じゃあ限りなく生(レア)で」
「あっ、火はつけないから安心していいよ。扉についたガラス窓からこころ、真っ暗な炉の中にいるおにいちゃんを反省するまでずっーと見守っててあげるから!」
「はぁ……なあ、こころ。世間ではお前のような奴を『やんでれ』と呼ぶそうだ。何て事だ。こころは心を病んでいるのか」
「は、はぁ!? 病んでるのはお兄ちゃんの方でしょ!!? 胸の大きい女の子ならだれかれかまわずセクハラするし!! そ、それにっ、そっ、そそその……どうしても触りたくなったのなら……こころのをいくらでも触らせて――」
「あぁ悪いが、俺は壁に触るのは趣味じゃない」
「殺す。一生、炉の中に閉じこめてやる。そしてこころが死ぬまで見守ってやる」
「はい」
そしてついに運命のその時がやってきて、こころの歩みがぴた、と止まる。
俺はとうとうこころに校舎中庭にある焼却炉の前に引き摺られてきてしまった。
あたりを見渡すが放課後と言う事もあり、人影はおろか、校舎内からこちらを見下ろす生徒もいなかった。
参った。七十億もの人間が生きるこの広い星の中で俺、大灰蝕への救いの手はどこにもないのか。
「しかし……結構大きな焼却炉だな」
「そうね。今はもう使われてないけど、使ってたころは大きな角材とか焼いてたからって先生から聞いたわ。うんうんっ。エロエロお兄ちゃんへのオシオキにはうってつけね!」
――しかし、ここは逃げねばなるまい。
大きなおっぱいは俺にとって生きる上の糧であり、そして俺の世界の全てなんだ。
「人一人くらいは余裕で入れそうね……さぁ。お兄ちゃん……いい子だからこの中に入りなさぁい」
猫なで声でそう言って、こころはいまや手馴れた動作で自分より倍ほどある俺の体をひょーいと軽々持ち上げ、開いた炉の中へ足からぐいぐい押し込む。
――だが、俺とて自分より歳下のこころにいいようにやられるつもりは毛頭無い。
俺の下半身が完全に炉の中に入った頃、上半身を炉の開いた扉から出した俺はこころに何気なく問いかける。
「なあこころ。この中……二人でもいけるんじゃないか?」
「へ?」
ぽかんと口をあけるこころ。
しかし、もう遅い。
俺はこころの両腕をガシッ!と素早く脇に抱え込み、こころの小学生のような小さな体を焼却炉の中の俺の胸元へ抱き寄せるように引きずり込んだ!
「きゃあっ!!」
俺はこころが逃げないよう、しっかりとこころの体をぎゅーっ!と抱きしめる。
「はははっ! どうだ! 幾らお前の腕力が変態並でもこうして体を抱いて両腕を使えなくしたら……――って、こころ?」
驚いた事に、そこには俺がいままで見たこと無い恥ずかしげな表情を浮かべるこころがいた。
「おい、どうしたんだよ? うがー、とかみぐー、とかいつもみたいに暴れないのか?」
「だ、だ……って。い、いきなりおにいちゃんがこころをだっこするから……す、するからっ……」
「は、はぁ……?」
その見たこと無いほどに真っ赤に顔を染めたこころは、やがて俺の顔を憂いた目でじぃっと見つめてくる。
「……そのね……こ、こころは……やっぱりその……お、お兄ちゃんのことが……」
こころは俺に抱きしめられながらも、赤くなった顔でもじもじと身をよじる。
「いちばん――――」
その瞬間。俺達の居る、薄暗い焼却炉の中が突如青い光に包まれ始めた。
「お兄ちゃん……? なに……この、青いの? こ、怖い……っ」
その正体不明の光にこころは薄暗いはずだった炉の中が青い光に満ちてゆくのを俺と同じく、なすすべも無く見た。
得体の知れない恐怖に俺は背筋が急に冷たくなるのを感じた。
「……と、とにかくここを出るぞ」
「で、でも――」
その不気味な青い光は俺達に逃げる時間すら与えないかのように毎秒ごとに増幅し、やがて俺たちを飲み込むように広がってゆく。
俺の目の前に広がる光景はもはや無限に増幅される青い光と俺にしがみついたこころだけだった。
「お、おにい――――ちゃ――――」
近くにいるはずのこころの声がひどく遠くに感じる。
青い光に飲み込まれると共に、体の動きも鈍り、次第に俺の意識が遠のいてゆく。
(ク――クソ。な、――――にが、どうなっ――――て)
もはや考える事もままならない。
思考までもがあっというまに青い光に飲み込まれてゆく。
こころの声も聞こえない。
青い光に意識が飲み込まれる直前、俺はこころの体を精一杯抱きしめた。
次に目が覚めたとき、俺達はこの世にいなかった。
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