第15話 監禁
目が覚めた私は周りを見回す。
一瞬、自分がどこに居るのか分からなかった。暗くなっているので夜になったのだろう。目が慣れて来ると、手足が縄で縛られていることに気付く。
自分は拐われたのだと改めて認識して体が震えて来た。その不安をなんとか押さえ込んで周りを良く観察する。
鉄格子が見える。床は木で出来ていて粗末なカーペットが敷かれている。私はそこに転がされている。どうやら座敷牢のような所に入れられているのだと分かった。
体を起こしてみる。幸いなことに手首は前で縛られているので、なんとか起き上がることは出来た。だが足首も縛られているので、立ち上がることは難しそうだ。
上を見上げると窓があるのが見える。外の景色が少しでも見えれば、自分がどこに閉じ込められているのか見当が付くかも知れない。私は背中を壁に押し付けながら、少しずつ立ち上がってみることにした。窓に近付くと月明かりの下、旗が立っているのが微かに見えた。
「あれは我が国の旗!? それじゃあここは大使館通り!?」
大使館通りとはその名の通り、各国の大使館が軒を連ねている通りのことである。考えてみればエイナ王国の大使館の前で拐われたのだから、どこか別の国の大使館にそのまま連れ込まれたとしても不思議ではないか。問題はどこの国かってことだけど、それは大体見当が付いている。
カシャン...
何か音がした。見ると鉄格子の前に小さい影が動いている。どうやら子供のようだ。ロウソクに火が灯される。10歳くらいの汚い格好をした男の子が、トレイを持って佇んでいる。どうやら食事を運んで来てくれたようだ。
『私の食事を運んで来てくれたの? ありがとう』
私は迷うことなくディード王国の言葉で話した。
『ボク達の国の言葉が喋れるの!?』
やっぱりそうだったか。
『えぇ、私はアビーっていうの。あなたの名前を聞いてもいい?』
『ボクはレイ...』
『レイ君ね。お願いがあるの。手首の縄をちょっとでいいから緩めてくれないかしら? そうしてくれたらその食事をあなたにあげるわ』
『で、でも...そんなことしたらご主人様に叱られちゃう...』
『緩めてくれるだけでいいの。お願いよ、とっても痛くて痛くて苦しいの...それにさっきからあなたのお腹の虫が鳴ってるわよ? 満足に食べさせて貰ってないんじゃない?』
『...分かった...ちょっとだけだよ?』
『ありがとう! 助かるわ!』
レイ君はたどたどしい手つきながらも縄を少し緩めてくれた。
『大分楽になったわ。ありがとう。さぁ、お食べなさいな』
『うん! 頂きます!』
レイ君はパンと水だけの食事を美味しそうにパクつき始めた。それを見て普段よっぽど酷い食生活を送っているんだなと思うと心が痛んだ。
『ねぇ、レイ君はここで働いてるの?』
『うん、下働きとして』
『待遇はいいの?』
レイ君は俯いてしまった。ボロ雑巾のような身形を見れば分かる。奴隷のような扱いを受けているのだろう。
『...ボクは孤児だから、雇って貰えるだけ有難いと思えってご主人様が...』
『そんな生活から抜け出したいと思わない?』
『思うけど...無理だよ...』
『私に協力してくれたら、こんな生活からオサラバさせてあげるって言ったらどうする?』
「お姉ちゃんが!? そんなこと出来るの!?」
「出来るわよ。だって私」
ここでいったんタメを作って、
『この国の王子様と友達なんだから!』
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