7 どういうこと?

 のびのびコロコロしながら幼児ライフを満喫している今日この頃。

アルジャーノンお兄様が一週間ぶりにやって来る。


 1年365日で12ヶ月あるよ。

10日で一週間、三週間(30日)で1ヶ月。あとの5日どこ行ったって?その5日間のうち年末に2日、年始に3日として追加されてるよ!


 アンジーちゃんがカレンダーで説明してあげよう!昨日覚えたんぞ!えらいでしょう?


 12月30日、年末1日、年末2日、年始1日、年始2日、年始3日、1月1日。


 ややこしくね?ワケ分からん。そのうち慣れるかねぇ?

この世界の人は何の違和感もなく使ってるので、ややこしく思ってるのは、違う世界の記憶がある私くらいかもしれない。


 アルジャーノンお兄様まだかなー?と思っていたら、ターナに着替えさせられたというか、てんこ盛りに飾られた。


 お貴族様の娘は、髪を伸ばしに伸ばして毛先を常にチェックしつつを繰り返して、背中までの長さをキープしてるんだって。

もちろん私もお貴族様なので、そう、ただのお金持ちなんじゃなくてお貴族様だったのよ。ビックリだわ。

それでね、背中まである髪を両サイドでハーフアップにして、くりんくりんに巻いて、リボンを結んで、更に、柔らかい素材で作られた色とりどりの花の飾りを髪に散りばめて、ふくらはぎまでの長さのヒラヒラふりふりのドレスを着て、ピカピカに磨かれた靴を履いてまっせ!どれもこれも新品おろしたてでござるよ!


 ターナさんや、今から何が起こるっていうんだい?

夕食の時間にしか会わなくなったアンドリューもおめかしされて不機嫌MAXで連れてこられ、一緒に玄関で待機となった。


 ピッチリと撫でつけられたアンドリューの髪は私と違って少しくすんだ金髪で、瞳の色は……たぶん青?何か暗いというか淀んだ感じなんだよねぇ。

私は、輝くキラキラの金髪にエメラルドグリーンの瞳です!鏡見てうっとりしちゃうほど可愛いのよ?うふふふー。アンドリューもたぶん美幼児のはずなんだけど、あれ?なんか肌の色も悪くない?マジで病気なのかなー。


 アンドリュー、マジ大丈夫?とチラチラ見ていると玄関の扉が開けられ、そこからチャラ男が入ってきた。いや、ごめん。チャラ男とか言って。でも、金髪にエメラルドグリーンの瞳で遊んでそうな雰囲気だったもので。


 「やあ、この子たちが僕の息子と娘かな?はじめまして、パパだよー」

「旦那様、もう少しきちんとご挨拶をなさいませ」

「ええー、親子なんだから堅苦しいのはナシでしょー?」


 やっぱチャラ男で良くね?

挨拶された後に、チャラ男と執事っぽいオジサマのよく分からない会話が続いているけど、終わりそうもないのでぶった切る!


 「パパー!!アンジーでしゅ!よおちくおねにゃいしまっしゅよろしくおねがいしまっす!」

「あはっ!かーわーいー!何これ!?娘が可愛い!!おいで!」


 おいで!と言って抱き上げられた。

おいで、の使い方おかしくね?私、動いてないよ?


 ニコニコと笑って抱き上げた私のほっぺをつんつんしていたチャラ男もといパパは、スッとアンドリューへ視線を向けると「これは、挨拶もまともに出来ないのか?天才だと聞いていたのだが、報告が間違っていたのか?」と、冷たい目をして言った。


 こわっ!チャラ男がマッハで、どっか行った!!

あ、こわっ!とか思ったら涙腺が……。


 「ぅえぇー……」

「あっ!わわわっ、どうしよう!?え?どうしたらいいの!?アンジー泣かないで、ごめんごめん」


 わたわたするパパに執事っぽいオジサマが「旦那様、お嬢様、失礼いたします」と言って私をパパから滑らかな動作で取り上げてターナに渡してくれた。

ひしっ!とターナに抱きついて落ち着くのを待っていると、「子供って難しいねー」という、ちょっとホッとしつつも困っているパパの声が聞こえた。


 ちょいと落差が激しいよね。

アンドリューの挨拶が遅かったからって、あの冷たさはなくないか?私には前世の記憶があるから「はじめまして」されたら「よろしくね!」て返すけど、急にやって来てテンション高めにパパですよ!とやられて反応できる3歳児って、そんなにいないと思うで?


 ところで、アルジャーノンお兄様は何処いずこ

キョロキョロとしていると大人たちの影になっているところから、ひょっこりと顔を出したお兄様は、「アンジー、お土産があるから部屋へ行こう」と言ったので、目をキランキランさせちゃったよ。


 「父上、僕はアンジーと共に彼女の部屋へ行っております」

「ああ、私もあとで行くよ。まずは、アルジーアルジャーノンから報告されたことを確認しなければならないからね」


 アルジャーノンお兄様の愛称は「アルジー」なんだけど、今の私の滑舌レベルだと「にゃるにー」か、頑張って「あるにー」になる。いつかアルジー兄様と呼べるようになるから、それまで待っててね〜。どうやら「アル」と、そこで切って呼ばれるのは不服なようなので。よく分かんないけど、こだわりがあるのなら仕方がないよね。


 ターナに抱っこされてお部屋へ行くと、デデンっ!!と部屋の真ん中に檻が置かれていた。

檻……。幼女の部屋に檻。しかも、どう見ても中におられるのは、人ですよね?人を檻の中に入れて幼女の部屋に置くの?ねぇ、アルジャーノンお兄様、どういうことっスか?


 


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