金持ちに転生したならばダラダラしたいよね
もちもち
1 きっかけ
連勤続きの仕事でクタクタになりながら、やっと有給が取れたことで、休みはどこにも出かけずにダラダラ過ごす!と仕事帰りに買い出しをして、幅の狭い歩道を家に向かって歩いていたんだけど、前方からは歩道どころか車道にまで広がって騒ぐ、どう見ても中学生の男女たち。
あぁ、こんなときに限って、こういう感じの子たちに遭遇するのね。
道あけてくれるかなー?
あ、やべぇ。ちぎれそう。
何がって?あ、ちぎれた!
そこまでは良かったんだけど、新人のアルバイトちゃんで重たいものとかを分けずに入れちゃったから、レジ袋が耐えきれずに破れて中身をぶちまけたっていう、ね。
せめてもの救いは潰れやすいパン類を上にのせてくれたことかな。たまにパンを一番下に入れるアルバイトちゃんがいるのよ。ぺっちゃんこになるっつーの。
疲れた身体をボキボキいわせながら、溜め息混じりに
「大丈夫ですか!?手伝います!」
「え?あ、ああ、ありがとうね」
「いえいえー!予備の袋とかって、ありますー?」
「それが忘れちゃってねぇ。ないんだわ」
「うわ、詰んでるしー!あ、そうだ!その上着を風呂敷みたいに使えないですか?」
「おおっ、頭いいねぇ。んじゃ、そうす……まぶしっ!!」
朝晩はまだ冷え込むからとウィンドブレーカーを着ていた私は、女子中学生らしき少女の助言に従いそれを脱ごうとしていたんだけど、突然の閃光に目をキツく閉じた。
光が収まったようなので目を開くと、そこには先程まで手伝ってくれていた少年少女たちどころか建物すら無かった。
ちなみに、手伝ってくれていたのは、道路に広がって騒いでいた子たちだったので、人を見かけや上っ面だけで判断しちゃいかんね。ええ子たちやった。
「あのー、そろそろ現実を見てもらってもいいですかねぇ?」
「いや、ちょっと無理っス」
「えぇー……」
「というのは置いといて。ここって、どこですか?」
「えぇ〜……。ああ、じゃあ、説明しますね。あなたは、勇者召喚に巻き込まれましたが、召喚した世界の女神から『いらないでーす!』と言って拒否されたのです。しかし、元の世界に戻すことは不可能でして、私共の管轄する世界へと転生していただくことになりました」
「拒否られたってウケる。しかも転生は決定事項!あ"ぁー、そんなことなら貯金全部使えばよかったぁーーー!!!」
床に八つ当たりしているうちに、ぽよんぽよんっと跳ね返ってくる感触が面白くなって遊んでいると、「あのー、そろそろ良いですかねぇ?」と遠慮がちに声を掛けられた。すまんね。
「それでですね。巻き込まれたということなのですが、特にこれといった能力を持たせてあげることは出来ないです」
「あ、まあ、そうよね。巻き込まれーの、拒否られーの、で、ぶっちゃけて言えば『ゴミ捨てて行くなや!?』て感じ?」
「そうですね。言われてみれば、そのような感じでしょうか。ゴミはさすがに言い過ぎですが。ということで、多少は裕福な家庭へ転生できますので、それでご容赦ください」
「いやいやいや!めちゃくちゃ、ありがたいですよ!スラム孤児からのスタートとか無理ですし!それで、よろしくお願いしまーす」
「あ、はい。では、行ってらっしゃいませ」
「早っ!マジか。うはっ、ウケるし。んじゃ、行ってきまーす!ありがとうごさいましたー!」
また目潰し喰らった。閃光が眩しいです。
なんか、めっちゃ周りが騒がしいっていうか、うるさいし。ここ、どこやねん。
あ、あかん。眠いわ。連勤続きで、しかも今日は二徹明けやったからねぇ。ちょっと寝させてもらうわ。おやすみー。
てことで、よー寝たわぁ。と思って起きたら薄暗かった。明け方かねぇ?
視界に入るこれは、ベッドの柵かなぁ?檻じゃないと思いたい。
転生って言ってたから自分の身体を確認するけど、目の前にあるのは
あー、何もしなくていいんじゃない?赤ちゃんだもんなぁ。嬉しいわぁー!
「きゃうあっ!」
うわ、ビックリした!何今の音。あ、私の声かな。
「あぅあー。あー、うー、きゃあうっ!」
出せる言葉少なっ!
しゃーないわな。赤ちゃんだもん。
騒いでいたつもりはないけれど、どうやら私の声が聞こえたらしく、扉を開けてメイドさんが入ってきた。
メイドさんっ!!?
ふわミニのふりふりメイドではなく、クラシカルなメイドさん。
本物のメイドさん!本物だー!!
ていうか、メイドさん何喋ってるかサッパリ分からない……。
えぇー……、語学学習からなのー?私、英語サッパリよ?外国語を覚えられる自信ないわー。
あれよね。聞いて聞きまくれば喋れるようになるとかテレビで言ってたもんね。
そんなわけないだろうけど、そうだということにしておこう。心の平穏を保つために。
でも、私の国語力って、そんなもん程度しかないのよねぇ。どうにもならんけど、どうしましょ〜。
それにしても、今は生後何ヶ月なのかねぇ?誰か教えてくれませんかねぇ?教えてもらったところで、どうするわけでもないですけど。
ということで、ギャン泣きしちゃうぞ☆
いや、お腹空いたみたいなんだよね。
泣くのと寝るのが私の仕事です。
なんて、素敵な響き……。
でも、どうやら近くにもう一人赤ちゃんがいるっぽい。
てことは、ここは……、どこなんだろうね?病院の新生児室というより普通のお部屋よね。周囲はボヤけていてあまり見えないけど、そこそこ広い部屋なのよ。
自宅出産っスか?てことは、双子っスか?いや、友達と一緒に産みました!的なことも……、ないか。いや、ワンチャンあるか?
そんなことより、ごはんくれー!
いや、固形物は無理だから、ミルクくれー!かな?
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