第136話



『プレイヤー【ジューゴ・フォレスト】によって、ゴブリンエンペラーが撃破されました。ゴブリンの首魁が倒されたことで、ゴブリンたちが逃走していきます。これにて、突発イベント【大災害・ゴブリンたちの襲来】を終了いたします。尚、今回のリザルトについては、各々のメッセージにて告知しておりますので、詳細が知りたい方はメッセージをご確認ください』



 俺が、というよりクーコがゴブリンエンペラーに止めを刺したことで、イベントのクリア条件を満たしたらしく、あっけなくイベントが終了した。



 やはりというべきか、俺の予想した通りこのイベントは元々運営が計画的に準備していたものではなく、どちらかといえば潜伏的にイベントの発現条件があり、その条件と満たすとイベントが開催されるものだったようだ。



 仮に俺がNPCから大災害についての話を聞いていなければ、ハヤトたちや他のプレイヤーにその情報を共有していなければ、また違った結末を迎えることになったのは想像に難くない。



 よくラノベなんかでこういったVRMMOものの話だと、イベントに失敗すると街や都市などの拠点がなくなったり、死んだNPCが生き返ることなく消失してしまったりという悲惨な結果を描いているが、今回もそうなっていたかもしれないと思うとゾッとする。



「さて、今回のイベントで何をもらったかな?」



 イベント終了の告知にもあった通り、結果はメッセージで寄こしてくるとあったので、俺はさっそくメッセージを確認することにした。





『イベント【大災害・ゴブリンたちの襲来】が終了しました。参加してくださった方はお疲れ様です。



 今回参加してくれたプレイヤーにつきましては、イベントの貢献度に応じた報酬を入手することができます。



 なお、報酬の詳細につきましては以下の一覧でご確認くださいませ』




 そして、一覧がこいつだ。





【貢献度ランキング報酬】



一位:賞金三百万ウェン、クラン作成券×一枚、ミスリル鉱石×三十個、銀鉱石×百個、☆☆☆☆武器製作券×一枚、☆☆☆☆防具製作券×一枚、ランダム武器防具製作券×十枚、蘇生薬(プレイヤー用)×三個



二位~五位:賞金二百万ウェン、ミスリル鉱石×十個、銀鉱石×二十個、星☆☆☆★武器製作券×二枚、星☆☆☆★防具製作券×二枚、ランダム武器防具製作券×五枚、蘇生薬(プレイヤー用)×一個



六位~十位:賞金百万ウェン、ミスリル鉱石×五個、銀鉱石×十個、☆☆☆武器製作券×三枚、☆☆☆防具製作券×三枚、ランダム武器防具製作券×三枚



十一位~三十位:賞金五十万ウェン、ミスリル鉱石×三個、銀鉱石×五個、星☆☆★武器製作券×四枚、星☆☆★防具製作券×四枚、ランダム武器防具製作券×一枚



三十一位~五十位:賞金三十万ウェン、ミスリル鉱石×一個、銀鉱石×三個、☆☆武器製作券×五枚、☆☆防具製作券×五枚



五十一位~百位:賞金十万ウェン、銀鉱石×一個、鉄鉱石×五個、銅鉱石十個、星☆~☆☆武器防具製作券×五枚



百位以下(参加賞):賞金一万ウェン、鉄鉱石×三個、銅鉱石×五個、星☆~☆☆武器防具製作券×三枚





 ※製作券の☆は☆一個分、★は星半個分となっております。 例:星2.5→☆☆★





 ふむふむ、今回のイベントで新しい素材であるミスリルが手に入るわけだ。これで新しい武器と防具が作れるな。他に目新しいものとしては、プレイヤーに対して使用する蘇生薬と武器と防具の製作券というものがある。



 これは製作券を一枚使用することで使用した製作券のレア度に応じた武器や防具が手に入るというもので、いわゆるガチャのようなものらしい。



 ちなみに、ランダムの場合運が良ければ星四以上のレア度の装備が手に入る可能性もあるみたいだ。これは、イベントが終わったらやるしかない。



 それ以外だと地味に嬉しいのが賞金が出ることだろう。なかなかモンスターを倒してちまちまお金稼ぎをしたり、生産で稼いだりという地道な作業を好まない人もいるだろうからな。……俺か? 俺は地味な作業は大好きだ。



 というわけで、以上がランキングによって得られる報酬だが、俺は一体どこにランクインされているだろうな。



 そう思いつつ、ランキングが掲載されているリンクがあったので、意を決してリンクを開いた。いざ、ポチっとな。




【貢献度ランキング】



一位:ジューゴ・フォレスト



二位:ハヤト



三位:レイラ





「おっ、おう……そうなったか」



 思わず解せないという感情が言葉となって出てきてしまう。どうしてこうなったのだろうか?



 俺はただただのんびりスローライフを送りたいだけだというのに、いつの間にやら生産組プレイヤートップとして認識されるどころか攻略組のトップとしても周知されるようになってしまっている。一体どこで道を踏み外したというのか……。



 何はともあれ、一位になったということはだ。一番いい報酬をもらえるということなわけだから、ここは素直に喜んでおこうではないか。



「あれ? 他にもメッセージが届いてるな」



 気を取り直してこれからを考えていこうと思ったその時、まだ読んでいないメッセージがあることに気付いた。ついでに読んでみると、そこにはアップデートのお知らせというタイトルのメッセージが表示された。







『いつもフリーダムアドベンチャー・オンラインをご利用いただきありがとうございます。今回新たに追加された要素に対応するべく緊急のメンテナンスを行いたいと考えておりますのでお知らせいたします。なお、アップデートで追加される要素につきましては、以下の通りとなっておりますので、ご確認いただきますようお願い致します。





・鉱山に新たに【ミスリル鉱石】の追加



 鉱山で入手できる鉱石に新たにミスリル鉱石が追加されます。





・騎乗できるモンスターの実装



 かねてよりのユーザーの皆様の要望に応え、「騎乗できるモンスター」を実装します。

 詳細は実装後、各自でご確認ください。





・新要素【ダンジョン】の追加



 ある特定のエリアに階層形式のエリア【ダンジョン】を追加いたします。

 こちらも詳細は各自でご確認ください。





・レア度表記の変更



 ユーザーの皆様から「レア度の表記がわかりずらい」という声がありましたので、再度レア度表記を変更いたします。



 変更前→☆☆☆(星3)  変更後→☆3(星三つ) ☆2.5(星二つ半)




 以上が今回のイベントに対してのアップデートの内容となります。

 全てのアップデートを実装するため〇月〇日の午前0時から〇月〇日の午前0時まで三日間のメンテナンスに入りますのでそれまでお待ちください。』





「……? 何か見覚えのある要素があるんだが」


「クエ?」



 そう呟きながら、その要素の一つであるクーコに目をやる。本人は特に気にしておらず、俺の目線に首を傾げているだけだったが、そういえばこいつ以外の騎乗モンスターって出てきていない気がする。これってもしかして、イレギュラーだったりするのだろうか?



 あとはダンジョンという要素もどこかで見たことがあるな。確か、あれはどっかのエリアに隠されているような場所だったはずだ。どこだったか……くそ思い出せん。



 まあ、とにかく今回のアップデートで他のプレイヤーたちにもいろいろと周知されるようになったことは良いことだと思うから、それで良しとしよう。



 あとは、最後のレア度の表記についてだ。



 どうやら、これに関しては初期の頃から度々クレームが入っていたようで、運営もいろいろと試行錯誤しているらしく、今回でそれが解消されることを狙ったアップデートのようだ。



 俺もサラリーマンであるからして、顧客のクレーム対応をさせられることがあるが、たまに個人的な感情が入った理不尽な内容が含まれていたりするから、その気持ちはわからなくはない。



「無理難題を吹っかけてこられても困るんだよなー。しかも、締結した後の契約内容の変更はないから報酬に反映されないし」


「クエクエ」



 などと恨み節を口にすると、まるでわかっているかのようにクーコが頷く。……お前絶対わかってねぇだろ?



 などとジト目を向けてみるも、再び首を傾げる動きをするだけなクーコにため息を吐きつつ、俺は洞窟を後にした。

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