(三)-6

「興味本位で?」

「興味本位で」

「やだ、ヤクザの組長本人に会って、なんて言えばいいのよ」

 正体がわからないなら、確かに本人に会って確かめるのが一番だと思うけど、それは法子の仕事ではない。組の人間に任せるべきだ。

「確かに……。ともかく、伝えたから」

「わざわざありがとう」

 そうして電話が切れた。次の約束をするわけでもなく、ただ、そのことだけを伝えるための電話だった。一週間ほど前にあったことを覚えていてくれたことは嬉しく思ったが、そんなことでいちいち電話をかけてくるなんて。学生時代じゃあるまいし。


(続く)

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