第47話 ケロッグとの約束
唐突ですが、今回は、私の誕生秘話(?)についてお話しようかと。
私って、生まれるまでに結構色んなことがあったらしいんです。
かなりお腹が目立つようになっていた母が駅の階段を下りていたら、急いでいたおっさんにどつかれそうになったとか。臨月なのに引っ越しをしなきゃいけなかったとか。予定日過ぎても全然生まれる気配がなかったとか。生まれる前日にものすごい大雪が降って、いざ生まれた時に父や祖父母がすぐに病院へ来れなかったとか。笑
これらのことはもう生まれるって分かってからの話だったわけですが、もっと前の話を今回はしようかと。
私を身籠ったかなぁと感じ始めたくらいの頃、母は実母(私の祖母)と潮干狩りに出かけました。アサリやシジミをザクザクと狩りながら、親子水入らずで色々な会話をしたようです。
ただその時に母は楽しみ過ぎたらしく、後日風邪を引いてしまいます。
身籠った感じがしてからすぐ、薬の服用は止めようと、常備薬から何から母は処分していました。妊婦の飲酒喫煙はもちろん、服薬も場合によっては胎児に影響を与える危険性があるからです。
ですが潮干狩り後の風邪は思ったより症状が辛く、ついに産婦人科のお医者さんに相談することになりました。
その結果、「この程度の薬なら大丈夫」ということで、少量の風邪薬を服用しました。
その後少しして、無事に母の体調は回復。産婦人科の定期検診へと向かいました。しかし安心したのも束の間、風邪が治ったことを医師は「良かったですね」と言いつつ、次の瞬間には衝撃的なことを口にしたのです。
「その服薬によって、胎児に影響が出る可能性はゼロではありません。影響が出るかどうかは、生まれてみないと分かりませんね」
と言われたのです。
大丈夫って言ったじゃん?! って、母は思ったらしいです。ここまで細心の注意を払ってきたのに、悔しくて仕方がなかったと。
私の両親は共に定型発達ですが、少し体が弱い部分がありました。祖父母曰く、両親の幼少期にはそれなりに苦労したとか。
そうした部分が私に遺伝するだろうことは覚悟していたので、せめて定型発達ではあって欲しい、と思っていたようなのです。元々人より少し弱い体に、障害まで加わったら生きていくのが大変だからと。
母は悩みました。
自分のせいで子どもに何かあったらどうしよう。このまま産んで良いんだろうか。
悩んで悩んで悩んだ結果、両親はある決断をします。
それが、ケロッグとの約束です。
当時私の両親は、くじ運(?)が良かったらしく、応募すれば何かしら当たることが多かったようです。例えばシール◯枚集めたら、抽選でコレ当たる! とかいう類のものです。
当時両親が応募していた中に、ケロッグのクマさんが当たる、というのがありました。コーンフレークを食べて、シールか何かを集めてたんでしょう。
両親は、「このケロッグの応募が当たって、クマさんが家に来たら産む」と決めたのです。第三者が聞くと「そんなことで決めるん?!」って思うかもしれませんが、当時の両親はガチだったのです。
しばらくして、クマさんは無事に(?)家にやって来ました。母はこれをきっかけに、私をちゃんと産むと決めたらしいのです。
ただ、クマさんが来ただけでは不安は完全に消せなかったようで、両親はクマさんに名前をつけて可愛がることにしました。
その名前は、当時私につける予定だった名前でした。
予定だった、と言ったのは、最後の最後に予想外の事故が起きたからです。
「おめでとうございま〜す! 元気な女の子ですよ〜!」
「え」
性別が予想と違ったんです。笑
とにかくデカいし力強く母のお腹を蹴るしってことで、てっきり男の子だと思われ、男の子の名前が用意されていました。でも生まれてみたら女の子。慌てて名前を考えたみたいです。笑
このケロッグとの約束の話を聞いたのは、かなり最近のこと。母も話すかどうか悩んでいたのでしょう。
でも多分、クマさんが来たから私が生まれたというよりは、私がこの世界に来たくて、自分でクマさんを呼んだんじゃないかな、とも勝手に思っています。
未だに私がクマさんとかぬいぐるみとかが好きなのも、原点はここにあるのかもしれません。笑
小さい頃から、将来の夢はコロコロと変わっていったものの、自分がどう生きたいかについては明確なビジョンがありました。どんな目標を持ち、どんな方法で、どう叶えたいのか。それは将来の夢がどんなに変わっても、しっかり持っていました。だから時々、周囲から「変わっているね」と言われることもありました。
スピリチュアルなことはあまり信じないけれど、多分私には、この世界でやり残したことがあるのかもしれません。
だからどう生きたいかが明確だし、生きたいと思う力も強い。
今進んでいる道も、やりたい気持ちの他に、やらなければならないような気持ちもありました。ある種の使命感、みたいな。そこにきっと何かがあるのでしょう。前世の忘れ物なのかもしれないです。
男だと強く思われながら、女として生きる
とにかく今ある命に感謝しながら、力の限り元気に、真摯に生きていく。
その大切さを、両親とケロッグのクマさんは教えてくれたんだと思うのです。
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