(二)

 もう何度目になるのだろうか。僕は演奏を終えた後、観客席へと向かい、一番後ろの席の端に座った。

 何人もの奏者が課題曲を弾いた後、審査発表があり、「東東京市ピアノコンクール」の看板が下がっている舞台上で授賞式が行われた。

 授賞式が終わる前に、僕はベージュのスーツ姿を着たママに手を強く引っ張られて観客席を出て、会場の端の壁際に連れてこられた。僕はここでママに怒鳴られるのだ。

「どうしてあんたはいつも入賞できないのよ! こんな小さな大会なのに! どうしてもっとちゃんと演奏できないのよ! やる気あるの? 何度も言っているでしょう、もっとしっかりやりなさいって。どうしてできないのよ!」


(続く)

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