始まりの、金色の羊

500年に1度、俺たちは命を得る。


人類が滅びるべきかどうか、見定める為の、材料として。



「さて、12星座の管理者とは?」


俺は寝台に寝そべっている。こんな問い、簡単だ。小さい頃から嫌って程言わされた。


「500年に1度生まれる、神に遣わされた存在である12星座達の生誕の予測、保護、補助、その他諸々の管理をする者。人でなく、生命力の塊で、魂を持っている。12星座達への過干渉は禁止。」



「うん、正解。よく言えたね、えらいえらい。」


うんうん、と頷きながら嬉しそうに12星座の管理者である男は言う。


「じゃあ次。12星座って何?」



「人類が滅びるべきか否かを神が判断する為の材料である存在。500年に1度、裁判の時に人の形を模し、命を得る。それ以外の時は星として空に還る。」


管理者はわぁ、といい拍手をする。


「よく出来てるね。大正解だ。これなら後の子達が来ても問題ないよ。ゾエは頑張り屋さんだね。」


頭を撫でてくる管理者の手を払う。出来て当たり前の事を褒められても嬉しくない。


「さて、勉強はこれくらいにして、君の記憶の整理もしていこうか。急ぎの件もあるしね」


目を閉じる。これまでの記憶を遡りつつ、自分が何者であるのか、少し話しておこう。




名前はゾエ。牡羊座の魂を持っている。人の形になるのは今回で12回目だ。

俺は生まれてすぐ、この管理者に保護された。いつも12星座の中で1番に管理者に見つかるらしい。裏表の無い、素直な性格が幸いし、毎度同じ場所に生まれてくるらしい。生まれてくる場所も、星として空にいる間、分かりやすく示しているともきいた。


記憶が魂に刻まれているから、俺は12回の人生の事を覚えている。どんな風に生きていたんだとか、仲間たちの事だとか。ただし、裁判の時だけはどうしても記憶がない。どのように裁判が行われるのか、そして神がどのような姿をしているのか、人間に漏らさない為らしい。


「さて、ゾエ。今、管理者の元にいる12星座は君を含めて3人だ。牡羊座の君と、牡牛座のカノンと、獅子座のリオ。そして、カノンとリオは君ほど鮮明な記憶が無い。…時間があれば戻るのだけど、今は待っていられない。」


12星座である俺達は、特別な力を持つ。多少の魔法というものや科学のあるこの世界であっても特別に強い俺達の力は、生まれてくる時に周りにいた魂にまで影響するらしく、それぞれの星の力を持って生まれる人間や、後天的に受け取る人間がいるのだ。


12星座程ではなくても、普通の人間よりも強い力をもつ人間は、『星の祝福』と呼ばれ、時には大きな財をなし、時には惨たらしい目に遭う。


星の祝福達を危険から守り、正しく生きられるようにしていくのも俺達の役割なんだとか。



「毎度の事ではあるけど、蟹座と蠍座の、おおよその生誕場所と、星の祝福がどこにいるか、記憶はあるかな。傾向だとかを知りたい。彼らは毎度気まぐれに生まれるから予測が立てられない。そして、いつも目を背けたくなるほど、酷い目にあっている。星の力のせいで…少しでいい、前回、次の生誕地のヒントは口に出していなかった?」


特殊で厄介な力を持つ蟹座と蠍座は早く保護しないと、ボロボロになっていたり、死ぬ手前になっていたりする。


前回は西の国ら辺で2人とも生まれていた。そういえば、えらくあの国を気に入っていたな。


「気まぐれな奴らだけど、前回と同じ西の国に生まれていると思う。微かに魂も感じる気がする。」


寝台から起き上がり、軽く目を抑える。膨大な記憶を整理するのは負担がかかる。

だけど、俺はいつも1番早くここにいるから、他の星座達の居場所を探すのを手伝っている。細かい事を記憶したりとかは、正直向いてないし好きじゃない。けど仲間達の為に、とりあえず頑張っている。


「ゾエ、ありがとう。今入った情報だけど、蟹座と蠍座より先に双子座が見つかったみたいだ。2人についてはこちらで調査をしておくから、先に双子座の保護に向かって欲しい。カノンとリオにも準備をさせておこうか。」



「わかった。2人の居場所の調査、なるべく早めで頼む。」


俺はそう言って、部屋を出た。


保護活動は、毎度かなり厳しい。俺はぬくぬく育ってこられたけど、死にたくなるような人生を歩んでいる星座もいるからだ。



双子座で、ようやく4人目になる。俺は気を引き締めた。

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