2FACE COR
Kohr.435円
#1 抽冬小雪、戦幕府に現る
・プロローグ・
世は戦幕府。
甲斐の幕府、この地には甲斐の虎、日本一の兵、甲州猿飛佐助など強き者がおりき。甲斐の虎に使ゑた抽冬恵柊がゐる。こたびはその恵柊の奥方、白弓姫と呼ばれたでござる伝説の奥方物語なり。
時は2020年5月、山梨県にある常永駅近くにある自宅にて。
〈小雪〉やばい! 遅れる!
小雪は寝坊してしまい着替えを済ませ家を飛び出し、学校まで走った。走る途中、小石に躓いて転んでしまった。幸い足から転んだので、怪我は少なかった。ただ、左足の膝を少し擦りむいて、血がでたので小雪は一時その場に止まり、鞄から、絆創膏を出してスグに擦りむいた膝に貼った。
そこまで痛くなかったので立ち上がり、また学校まで走った。
このドジっ子な女の子は、抽冬小雪。
中学三年生、今年は受験の年だ。見た目はスリムな体型で、身長低め、ショートカット風に一つ縛りの髪型に薄い灰色の丸メガネに左髪に赤いリボンを付けている。小雪は地味で、得に目立つことも無く、将来の夢もない、ただ、優し過ぎる子という印象。大根畑から引っこ抜いてきたような素朴な女の子だ。
小雪は、慌てて学校に向かった。学校は『山梨県中央市石蕗中学校』だ。
本当は学校に行きたくないという気持ちがあった。なぜなら、小雪は学校でいじめを受けているから。
いじめは小学3年の頃から始まったそうだ。
中々、先生や親にも言えず黙ったままいままで来てしまった。
小雪は学校にギリギリ着いた。ハアハアと息を切らしながら下駄箱の前で芋虫のように丸くなり膝に手をついた。すると、そこに女子2人組が小雪の目の前に立った。
そう、いつもいじめてくる女子2人だ。こいつらは酷い時は普通に殴ってくる。しかも顔とかではなく見えないところを狙ってくる。例えば、お腹とか、足とか。
この2人組が小学3年から今日まで小雪に暴行を振るっていた。
虐める側、彼女達の言い分はこうだ、「地味なくせに勉強できて顔小さくて、茶髪で金持ち」ということだ。
そう、小雪は大きな昔ながらの日本家屋の金持ちの家に暮らしている。
あの家には大昔、強靭な武将の住まいだったそうだ。抽冬家代々伝わる物が家の蔵にあった。小雪は楚楚とした黒い瞳の初心な箱入り娘だ。
急に2人が立ちはだかったので、小雪はビクッと立ち尽くしてしまった。いじめっ子2人は仁王像のような怖い顔で立っている。いじめっ子は右から元田未愛、島川瑚々だ。
〈島川〉ねえ、お前さ今日金持ってきてるよね?
島川を中心にいじめが始まっている。言わば、島川がいじめリーダー的存在だ。
〈小雪〉 え、あ、あの、持ってきてないです……
〈元田〉嘘つけよ! 財布だせ!
そう言うと、慌てて財布を出してしまった。渡す際、手が震えていた。
その瞬間、何故かそのいじめっ子2人が何かを見てビクッと怖がっていた。
その場面を見ていたのは、同じクラスの小牧八重花さんだ。比較的静かな女性で長髪で身長も高い。強いて言うなら我が強いところがあり眼力が強いので誰も近寄らない。八重花はその場面を見て小雪の後ろで2人をガン見していた。飛び立った鷹がなにか獲物を見つけたかのような恐い目付きでなにも言わず見下ろしていた。
〈元田・島川〉ヒィ……
〈島川〉な、なによ!? べつになにもしてないじゃない! 瑚々! 早く教室いくわよ!
〈元田〉う、うん!
そう言うと、すぐさま走っていじめっ子2人組は教室へと向かった。どうやら八重花が怖くて行ってしまったようだ。
助けてくれた八重花に小雪はお礼を言おうとするが、八重花は無視してさっそうと教室に行ってしまった。ただ、最後に一言言われた、「あんたもう少し強くなったら?」と怖い顔で言われてしまった。
小雪は何も言えず、そのまま立ち尽くすことしか出来なかった。いままで下向いて生きてきて、いつの間にか何も言えない弱い自分になっていた。そんな自分が嫌いだった。嫌でしょうがなくて、いっそ死んでしまいたい……
そんな事も考えるようになっていた。
小雪はそんな憂鬱な気分で授業を受けいた。
授業が終わり、帰る際にいつもあのいじめっ子2人組がイジメをしてくるのだが、今日は朝の鷹女の効果なのかなにもしてこなかった。その時少しどこか安心した。
夕方、小雪は家に帰るとおじいちゃんがいた。
〈侃〉小雪帰ったか?
〈小雪〉おじいちゃんただいま
〈侃〉小雪、すまんが庭の蔵から「甲州白雲木伝説」という巻物を取ってきてくれ、特徴ある巻物だからすぐわかると思う
〈小雪〉わかったわ
〈侃〉ごめんな、ちょっと腰が痛くてな
〈小雪〉大丈夫だよ! 取ってくるね!
小雪は、そう言うととりあえずカバンを置いて蔵に入った。蔵は庭の右端にある。家をでて1分程で着く。
小雪はその巻物を探すが中々見つけられずにいた。
探してる時に2階に小さな豪華な宝箱のような箱があった。小雪はその箱を開けると、そこには白に少し錆びた翠色に覆われた書物だった。どうやらこれがおじいちゃんが言っていた巻物だと感じた。横に小さな字でなにか書いてあった。だけど、その字は昔の言葉なのか読めなかった。小雪は、気になりその場で巻物の紐を解いてしまった。
すると、瞬く間にその巻物が輝り始めた。
日の出が出始めて光り輝くように、小雪はその輝りに包まれた。思わず眩しくて眼を瞑った。
暫くして、小雪は眼を徐々にあけると、そこは何も無い草原だった。そこには自分が今まで住んでた家や庭、蔵、遠くに見える街並み、それが一切ないところに、まったく見たことない景色、小雪はそこにいた。その光景に小雪は戸惑うしかなかった。ここは何処なのだろうか。凄く遠くに微かに小さな声も聴こえていた。その声は誰なのか。
ー # 1 抽冬小雪、戦幕府に現る ー 続く
2FACE COR Kohr.435円 @katumata
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