(二)-12
後ろから「お前も入るか?」と、男子生徒に声をかけられた。ギョッとしてしまい、恥ずかしくなり「バカ!」とだけ言い残し、私は駆けだしていた。まさか私が「男子トイレを覗いていた痴漢」なんて噂、広がったりしないよね?!
私は恥ずかしさのあまり、ムサシ君のことをすっかり忘れて教室の自分の席まで戻ってきてしまった。
教室の廊下側を見ると、ムサシ君はすでに自分の席に戻っていた。
私は再びムサシ君に声を駆けようと席を立ち上がった。しかしそこでチャイムが鳴った。六時間目開始の合図だ。同時に教室の前方のドアから先生が入ってきた。世界史の瀬戸海シズオ先生だった。
私はやむなく、自分の席に戻った。
せっかくムサシ君の近くまで行ったのに! すぐ近くまで行ったのに! あとは声をかけるだけだったのに!
(続く)
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