第4話 明日に向かって
此処は総合病院の一室、ペキはゆっくり瞼を開いた。真っ白な天井が目に映る。
ペキは驚きベッドから勢いよく起き上がると
「こ、此処は何処だ!どうしてこんな所に?」
「ハハハハ…そう驚かなくても大丈夫だよ。」
その声にすかさず横を向き
「あんた、誰だ?」
訝しげに尋ねた。
「やっと目が覚めたね、3日も眠ってたんだよ、それだけ眠ったらスッキリしただろ。私は君の主治医のジンジャーだよ、よろしく。」
頭に白髪の見え隠れする痩せ形の白衣を着た中年の男は、ペキを見て微笑みながら言った。
「君の体を診たんだが怪我一つ見当たらない、健康そのものの体だったよ、いや~本当にビックリだ、奇跡としか言ようがないねぇ全く。」
「きせき?」
「そうだよ、君みたいな頑丈な人間は見たことがないよ、兎に角目が覚めて良かったな。」
安心した様に微笑んだ。
「ちょ、ちょっと待ってくれ。」
ペキは主治医の白衣を掴み顔を見上げて
「あんたは俺を診てくれた人なんだよな、そして誰かが俺を助けてくれた。でも…俺は誰だ?」
「ん?」
「俺は、俺が誰だか分からない!」
主治医はペキの掴んだ手をゆっくり外すと驚いた様子もなく
「君は多分何かのショックで一時的に記憶を失ったんだろう、心配しなくてもその内思い出してくるよ。」
ペキは医者の言葉に少し安心した様子で
「だよなあ、ハハ、、」
ペキは軽く笑った。
ジンジャーはドアの所迄行き、
「君が目覚めたこと、看護師に伝えておくからね。」
ドアを開け出て行こうとして、立ち止まり、
「そうだ、確か今日の夕食はハンバーグだったよなあ、君ラッキーだね、沢山食べるんだよ。」
医者はニコニコしながらペキにそう言うと、部屋から出て行った。
ペキは何度も寝返りして思い出そうとするが、モヤモヤが止まらない。居畳まれずベッドから起き上がると
「だぁぁぁ!」
頭をかきむしった。
天空の雲の上、カミュールはどっしりあぐらをかいて座った。
おもむろに筋肉のしっかり付いた腕から虹色に輝くアームレットを抜くと軽く口づけをして
「頼むわよコメットちゃん。」
そう言うと望遠鏡で覗く様に地上を見た。
「もう!何も見えないじゃない!このポンコツ!」
そう言うと手のひらでアームレットの端っこを数回たたいて又アームレットを覗き込んだ。暫くして
「ペキ!」
「あれはペキよ!間違い無い、やっと目覚めたのね。あんたが天使になれるか、今から試練の時がやって来るのよ…。こうしちゃ居られない!神様にお知らせしなくちゃ!」
そう言うと立ち上がり、大きな羽を翻し神の所へ飛んで行った。
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