(二)-8

「そういえば、あんたが昨日言っていた大事な人って、結局誰なのよ」

「誰だっていいだろ」

「その人と会ってたの?」

「違うよ。その人は僕のうちにいる」

「本当? さっきからずっとここにいたけど、全然気づかなかったよ。ご飯、三人分作った方がよかった?」

 そう言ってから、しまったと思った。「大事な人」と明なら二人分でいい。そこにもう一人、自分の分を入れてしまった。

「いいよ。僕の分だけで」

 明は「三人分」の意味については気がつかなかったみたいだった。ちょっとホッとした。でも自分の分だけでいいというのも、少し寂しかった。せめて私も一緒にご飯食べよう、みたいなふうに誘ってくれてもいいのに、と思った。でも今の明なら仕方ないか。私はお邪魔みたいだし。そう思うと、少し腹が立った。


(続く)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る