第20話
「ふぅ……」
湯につかりながら、日ごろの疲れを癒す。
「どうしたのじゃ?」
そう。主にインフェルノちゃんから受けている疲れだ。
「とう!」
「痛え!」
急にわき腹をつつかれる。こういうところだよな。
「とおー!」
「やったな~」
反対側からウンディーネちゃんにじゃれつか───誰もいない。
「わしじゃが?」
「うぜえ!」
全く癒されないわ。風呂なのに。
「ってかウンディーネちゃんは?」
「そこじゃろ」
インフェルノちゃんがお湯を指す。
「潜ってんのか?」
「いや、ディーネは水の精霊じゃろ?水と同化しておるぞ」
ディーネ?ああ、ウンディーネちゃんか。
「へえ……水と同化か。エロいな」
「漏れとるぞ」
「漏らしてねえよ」
「漏れとったじゃろうが」
「漏れてねえって」
「漏らしとったわ」
漏れ漏れエロ……うるせえろ。よ。
なんてくだらないやり取りをしていると、浴場に誰かが入ってくる音がした。
「……」
「……」
インフェルノちゃんも空気を読んで静かになる。
さすがに、幼女とこんな会話をしているところは他人様にはお見せできないだろう。
「あら?こんな時間に……」
その人は昼間から人がいるとは思っていなかったのか、そうぽつりと漏らした。俺は漏らしてないが。
「失礼。もう上がるところですので」
「あら。せっかくですし、ご一緒しません?」
ちょうどインフェルノちゃんとのやり取りにも疲れてきたので切り上げようとしたところ、なぜかその人に止められた。
「そうだ。もしよろしければ、体を洗って頂けると嬉しいわ」
痴女じゃねーか。もしかして、狙われてたのか!?
だいたい、こんな時間に風呂に入ろうとするなんておかしい。そんなの馬鹿か変態に決まってる。
「だーれが馬鹿か変態じゃ!」
やっぱり馬鹿か変態じゃないか!
「そこのおにいさん?私のカ・ラ・ダ。洗って頂けませんか?」
馬鹿と変態の対処が追い付かない!
俺が困り果てていると、水の中から救世主が現れた。
「わたしがあらってあげるー!」
いつの間にか幼女フォルムに戻っていたウンディーネちゃんが水の中から飛び出すと、その女の人に巨大な水柱を左右からぶつけた。
「あばばばごぼぼぼぼ」
「ウンディーネちゃん!?タイムタイムタイムタイム!」
「えー?」
慌ててウンディーネちゃんにストップをかけると、女の人は見事に空中に放り出された。
「危ない!」
「ひゃう!」
なんとか滑り込みで女の人をキャッチする。
手には女の人特有の触手のようなにゅるにゅるの感触が───
「あれ?」
「あの……」
その女の人をよく見てみると、なぜか頭から無数の蛇が生えていた。
「……」
「……ぽっ」
ぽっ。じゃねーよ!バリバリメデューサじゃねーか!あれか?誘惑につられて振り向いてたら石化されてましたってオチか?
「わしがおるから石化されても問題なしじゃぞ」
「メデューサがいること自体に問題しかねーよ」
俺はそれしか言えなかった。
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