「……あ……え？」

ハーゲンディは眼球を左右上下に動かした。全身に激痛が走り、身体が動かない。

数秒後、自分が頭部から胴体、尻にかけて何かに串刺しにされていることに気付いた。大地に散らばる脳症と血と頭蓋骨の欠片は自分のモノだ。

「あ、あれ？」

ハーゲンディは全身を痙攣させた。戦斧がいつの間にか手から離れ地面に転がっている。

ハーゲンディは透明な槍に貫かれていた。

この透明な槍こそが、クラウディアの本物の槍だった。『聖槍』。それはクラウディアがいつも手にしている槍ではなかった。

「……ははは。そうか、ズルいね。こっちが……本物の……『聖槍』か……」

「そうだ」

クラウディアは優雅な所作で起き上がると胸鎧の土埃をはらった。

「……しかも……ダメージがなかったんだね～」

「少しはあった。演技がうまいだろ？」

「……ず、ずるいね～」

ハーゲンディの割れた頭蓋から血と脳漿が落ちていく。

「ああ、人は私が手にもつ見える槍を見れば、それが聖槍だと思い込む。私は一度もこれが聖槍だと言ったことはないのだがな」

「い、一度に……わ、罠を、……３つ……か……」

ハーゲンディの両眼から血が溢れた。

「いや、正しくは５つだ。答えは教えん。地獄でゆっくり考えろ」

「……い、良いね～。た、退屈はしないね～」

ハーゲンディは口から大量の血を吐き出すと絶命した。

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