【異世界幻想記】~ 異世界転生して女神から《SSS級クラス》の料理チートをもらいました。エルフの美少女奴隷、美女精霊、女勇者、乙女騎士、大魔導師と一緒にグルメな料理を作れる剣士となり魔神を倒します~
第72話 罪劫王ハーゲンディ VS 槍聖クラウディア
第72話 罪劫王ハーゲンディ VS 槍聖クラウディア
「……そうか。発動条件はその声か……」
クラウディアはようやくハーゲンディの魔法を理解した。
ハーゲンディの魔法は、敵の視界と平衡感覚の歪みを徐々に強めるのだ。
初動段階ではあまりに微少すぎて気付かなかった。
ハーゲンディは魔力を発動させる時、敵に感知されない術に長けていた。
クラウディアほどの練達の騎士に発動も、そして自分に魔法がかけられたことさえも気付かせない。
(……一番、相性の悪い敵とぶつかってしまったか……)
クラウディアのような騎士に取っては一番、相性が悪い敵だった。クラウディアは槍聖として、優れた動体視力と平衡感覚に恵まれていた。そしてそれが最大の武器の1つである。
その武器を奪われた。如何に強大な力でもあたらなければ意味が無い。
(いや、それ以上に……)
クラウディアは片膝をついた状態のままハーゲンディを見上げた。
「……お前を甘く見た。いや、騙された。……お前の知能を見誤った……」
「そうだよ~。私は敵に侮られるのが得意なんだ~。みんな私の言動と姿を見て愚鈍だと思い込む。私が精緻な魔法を操るタイプには見えなかったでしょ~」
ハーゲンディが牛の顔に残忍な笑みを滲ませる。
ハーゲンディの魔法は狡知極まりないものだった。敵に一切関知されない魔法。それらを編み出して、操るには高度かつ精緻な頭脳が必要になる。ハーゲンディは、その高い知能を隠していたのだ。
「さて、お姉ちゃんには死んで貰おうかな~」
ハーゲンディが、ゆっくりと地面に跪いたクラウディアに近づく。
両者の距離が4メートルにまで接近した時、クラウディアが全身の力を使って槍を繰り出した。
巨岩を粉砕する槍の一撃。神速の刺突。だがそれはハーゲンディの戦斧で弾かれた。クラウディアの手から槍がはじけ飛び、宙空高く、放り上げられる。
「無駄だよ~。必ず起死回生を狙っての一撃がくると予想していた。私は絶対に油断しないんだよ~」
ハーゲンディはクラウディアを蹴り上げた。腹部を蹴り飛ばされたクラウディアは8メートル以上転がって大地に仰向けに倒れた。
「頑丈なお姉ちゃんだね~」
ハーゲンディは嘲弄した。並の人間ならばハーゲンディの蹴りで上半身が吹き飛んでいる。
ハーゲンディはゆっくりと近づいた。もはやクラウディアには力が残っていない。勝利を確信する。
だが油断はしない。クラウディアが放り出した槍を見る。その槍にむかってハーゲンディは黒炎の魔法を放った。
クラウディアの槍が黒い炎で燃え上がる。
「これで聖槍はなくなったね~。槍聖が聖なる槍をなくしたら何かな? ああ、ただの人間か~」
ハーゲンディは油断なく戦斧を構え、大きく振り上げた。クラウディアは動かない。悔しげに自分を見ている。
「さて、聖なる槍は完全に破壊されたよ。本当は槍を遠隔操作して私を背後から貫く筈だったんでしょう?」
ハーゲンディが冷静に告げると、クラウディアは諦めたように口を開いた。
「……そうだ。よく分かったな。お前を背後から槍で串刺しにするつもりだった……。あの槍は遠隔操作。つまり私の意思で操作できるのだ……」
クラウディアはそう告白すると目を閉じた。
「だろうね。槍が独りでに飛んできて、私は背後から貫かれて死ぬ。悪くない作戦だったよ~」
ハーゲンディが戦斧を握る両手に力を込めた。
クラウディアが目を閉じた。ハーゲンディはそれを死を覚悟したと理解した。
「さて、槍聖クラウディア、死ね」
ハーゲンディが戦斧をクラウディアの頭部めがけて振り下ろした。
直後、頭蓋が砕けた。血と脳症が宙空に振りまかれ、頭蓋骨の欠片が大地にばら撒かれる。
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