【異世界幻想記】~ 異世界転生して女神から《SSS級クラス》の料理チートをもらいました。エルフの美少女奴隷、美女精霊、女勇者、乙女騎士、大魔導師と一緒にグルメな料理を作れる剣士となり魔神を倒します~

藤川未来(ふじかわ みらい)

第1章 新世界

第1話 プロローグ  死闘

 巨大な悪魔が雄叫びをとともに、俺めがけて斧を真横に薙いだ。俺は跳躍して後退し、巨大な斧から身をかわした。


 悪魔の斧が俺の頬をかすめ、鮮血が飛び散る。


 俺は愛剣を握りしめ、敵の足めがけて、神剣〈斬華ざんか〉を袈裟懸けに振り下ろそうとした。


 次の刹那、凄まじい衝撃が俺の左側面をおそった。激痛とともに俺の体が吹き飛ばされる。20メートル以上吹き飛ばされて、俺は迷宮の壁に叩き付けられた。

 悪魔の尻尾が俺を死角から攻撃したのだ。


「ぐう!」


俺の口から血が、吹き出た。


背中と左肩に激痛が走り、視界が一瞬暗くなる。


(意識を失うな! 死ぬぞ!)


俺は自分を叱咤して、四つん這いの姿勢で《敵》を見据えた。


俺の瞳に怪物が映り込む。


迷宮の主。悪魔アンドラス。


体長3メートルを超える巨躯。


山羊に似た頭部、背中にはコウモリのような羽。


下半身は黒い蜘蛛。


尻尾は巨大な蛇。


悪夢のような醜悪な外貌から、凶悪な殺気と魔力が吹き荒れ大気が鳴動している。 


片手にもった巨大な戦斧には華麗な装飾がなされ、青白い幽鬼のような光を発していた。


俺は俯せの姿勢で床に倒れた。


悪魔アンドラスは床に倒れた俺を見て勝利を確信して近づいてきた。


醜悪かつ獰猛な笑みが悪魔の顔貌に浮かぶ。


悪魔アンドラスは、巨大な戦斧を両手もちにして高々と掲げた。


次の刹那、俺は全身をバネにして飛び起き、神剣〈斬華〉を逆袈裟に切り上げた。


左下から右上まで、斜めに剣光が光る。


俺の剣から魔力で形成された斬撃が飛ぶ。


青い血が中空に飛び散った。悪魔の血だ。同時に悪魔の脚が斬り飛ばされて宙に跳ね上がる。


悪魔は絶叫した。驚愕と苦悶に悪魔の顔が歪む。


俺は全身を弾丸のようにして跳躍し、横薙ぎの斬撃で、悪魔の首を切り落とした。


切断された悪魔の首から、青い血が奔流のように噴き出した。


床に悪魔の首が、ゴトリと落ちる。


首を失った悪魔はゆっくりと後方に傾き、やがて地響きのような音とともに床に倒れ込んだ。


俺は、悪魔に視線を投じた。


「悪いな……。これは騙し討ちだ……」


俺が悪魔を倒した剣技は、津軽真刀流つがるしんとうりゅうの奥義の一つだ。


 奥義といっても負傷したふりをして俯せになり、その後、全身の筋力を使って跳ね起きて逆袈裟に切り上げる、それだけの技だ。


 卑怯だと言う人もいるかも知れない。


 だが、これは戦国時代に使われた剣技で、単純だが実戦では有効だ。複雑すぎる技は、現実の殺し合いでは役に立たないことが多い。


悪魔アンドラスの首から神剣〈斬華〉を引き抜き、血振りをして鞘に収める。


俺は悪魔の死骸から降りて部屋の出口にむかった。


扉を開ける。


銀髪の少女がそこにいた。



少女は美しかった。 



幻想でつくられたような完璧な美貌。処女雪よりも澄んだ白い肌。


年齢は10歳前後で、黄金の瞳には涙があふれていた。


少女の黄金の瞳が俺の姿を鏡のように映し出す。


「ナギ様!」


銀髪の少女が俺めがけて飛び込んできた。


俺は苦笑して少女を抱きしめた。銀色の髪から甘い匂いがした。


「大丈夫だよ」


俺は少女の背中をポンポンと叩いた。


少女は、そのまま俺の胸に顔を埋めて震えながら俺に強くしがみついた。


やがて少女は端麗な顔をあげると、


「ナギ様。怪我はありませんか?」


と言った。


「少しある。でも生きてるよ」


俺は微笑を浮かべた。少女を安心させなければならない。


この世界の、あらゆる恐怖と危険から彼女を遠ざけたい。


この子は俺しかいないのだ。俺が護らねばならない存在であり、彼女が生きていることで俺も護られている。


俺はふいに自分の右手が震えていることに気付く。


(ああ……怖いなぁ……)


今頃、恐怖が襲ってきた。俺は怖かったんだな……。


(当たり前か……。俺は17歳で、ついこの間まで単なる高校生だったんだから……)


ふいに緊張感がとけて俺は床に膝をついた。


銀髪の少女が、あわてて俺に治癒魔法をかける。


俺の体が淡い光に包まれ、負傷した箇所が治癒されていく。


やがて、回復した俺は床に倒れた悪魔の死骸を見やった。


「さて……あの悪魔を喰おうか?」


俺が、そう言うと少女は微笑みながら、


「はい」


と、答えた。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る