電信柱の話
蓬葉 yomoginoha
電信柱の話
昔、地方を回って生計を立てている人の男の子と、同じような家の女の子が、よく井戸の側で遊んでいた。
成人してからはお互い恥ずかしくなって、すっかり遊ばなくなっていったけれど、男は女を妻に、女は男を夫にしたいと思っていた。
親たちは別の人と結婚させようとしていたが、二人は言うことを聞かなかった。
そんな中、男はこう歌った。
女はこう返した。
くらべこし ふりわけ髪も 肩すぎぬ 君ならずして 誰かあぐべき
こんなふうに文通をしているうちに、とうとう希望の通り、結婚した。
『
「男の和歌は、こういう意味です」
国語教師が黒板に意味を記していく。
井戸枠の高さに及ばなかった私の
「
あなたとどちらが長いか比べていたおかっぱ髪も、今は肩を過ぎてしまうほどになりました。しかし、あなた以外、誰が私の髪上げをしてくださるでしょうか。
「ちょっと難しいですね。まず、[ふりわけ髪]というのはおかっぱみたいなものだと思ってくれればいいです。ようするにそんなに長くはないよっていうことですね。そんな髪の毛があなたに会えない内に肩を過ぎてしまったと言っているわけです。で、最後の[あぐべき]というのは、髪上げという儀式をおさえれば理解できます。これは、当時の女性の成人の儀でした。……うん? 何ですか? ああ、そうですそうです。
じゃあみなさんちょっと読んでみましょう。
教室中にリピートの声が響く。
こんな大勢で
しかし、そんな中一人だけ、人一倍この話に興味を抱いた者がいた。
もちろん、彼女はタイムスリップした人間でも、登場人物の生まれ変わりでもない。
「すごっ……」
しかし、小さくそう呟いた彼女と作中の女との間には、ある共通点があったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます