2023/03/12

 気づいたら夜中で、学校ぽい廃墟?の廊下に立っていました。


 コンクリートの壁にスライド式の扉が規則的に並ぶ、無機質な光景。

 壊れた物は無いのに廃墟と感じたのは、明かりと人気が全くなかったせいでしょう。

 まぁ、学校が舞台のホラーゲームにありがちな風景。って言えばそれで終わりな感じ。


 ただ、突き当たりに見える階段は、学校というより商業施設でした。

 一言で言うなら、Y字? 左右の端に上階に繋がる階段の裏が見えて、正面の広い踊り場から中央続く広めの一本の階段……で廊下。という感じ。


 その階段をぼんやり見ていたら。ふと、踊り場に人影がある事に気づきました。


 車椅子に乗った男性……歳は五十より上か? と何となく思いました。

 ハッキリ見えてはいませんが。


「……は……だ?」

「はい?」


 男性が何か言いましたが、聞こえません。

 当たり前です。こっちは階段の下、向こうは階段の踊り場。そこそこ遠いのです。

 聞き返す私に、男性がもう一度。今度は少し大きめの声で言いました。


「イハイは、どこだ?」

「イハイ?」


 私は一度オウム返しをした後、少し考えてから、聞きました。


「イハイって、板に戒名書いた位牌ですか? それとも、ご遺体を焼いたあとの遺灰ですか?」

「……は? 板に決まっているだろう」

「いやいや」


 何言ってんだこいつな男性(繰り返すが姿は見えていない。雰囲気)に、私はなおも言いました。


「最近は宗教的なのか思想なのか知りませんけど、納骨をしないご家庭もあるらしいんですよ。

 それでご遺族のもとに幽霊が〜なんて怪談も聞きますし。

 そうそう。最近では刑事ドラマでもすっかりお仏壇を見なくなりまして……」


 ーーそこで意識だけ先に目覚めました。


 まだ開けきってないまぶたの裏に、男性が呆れかえっている光景が見えた気がしました。



 ……なんか、ごめんなさい?

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