(二)-8

 秋に下見に来たとき、この計画がどれほど馬鹿げたことかと思った。でも、死体はなるべく見つからない方が良い。だから、この湖に沈めてしまおうと考えたのだ。

 秋に来たときには、晩秋ですっかり葉が落ち紅葉も見ることができない時期ではあったものの、多少の観光客はいた。しかし、さすがにこの時期なら人はいない。目撃されることもないだろう。ましてや夜だ。見られるリスクはさらに低いだろう。

 現場を確認し終えると、私は足元に注意しながらホテルへと戻った。

 私は人気のないエントランスに入ると、エレベーターで地下まで降りた。一応廊下にあの男がいないかを確認してから女湯に入った。

 外ですっかり冷えきった体は、温泉の温度に慣れるのに少し時間がかかったが、慣れると熱くもぬるくもなく、ちょうど良い湯加減だった。

 久々にリラックスしている気がする。いや、でもこれからが本番だ。私にはまだやらなければならないことが残されている。姉の仇をとることだ。


(続く)

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