湖の底

筑紫榛名@次回1/19文学フリマ京都9

(一)

 昼前に東京駅を出発した東北新幹線「はやぶさ」一九号は、大宮駅を出発すると県庁所在地のある宇都宮、福島駅も通過し、約一時間後に仙台駅に到着する。乗客の多くは会社員で、一部観光客もおり、その多くがこの駅で下車していった。

 私とこの男はこの列車でそのまま盛岡駅まで行き、在来線を乗り継いで温泉郷まで行く。

 新幹線に乗って早々、缶ビールを二本開けたこの男は、シートのリクライニングを最大限に横倒しして、今は目をつぶっていびきをかいていた。

 私は、この男を殺す。せっかくの旅行なのに寝てしまったから、というわけではないではない。この男は姉の仇だからだ。そのために私は、この男をこの旅行に連れ出したのだ。


(続く)

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