記憶

Kolto

第1話 忘れられない忘れた記憶




__________________



………あなたはいい子ね〇〇!


大きくなったら、父さんみたいないい男になるんだぞ!


何それ!ふふっ


あなたは………で……のよ……〇……


__________________



…………


まだ夜が明けていない暗闇の中 目が覚める


汗か涙か分からないものが頬を伝う


「またこの夢…」


ぽつりと小さな声で呟く


「…………っ…はぁー……」


寝床から大きな身体を起こす


月の光でアウラ・ゼラの特徴である身体の黒い鱗のツヤが見える


よく分からない夢

声が聞こえているようで聞こえないような

ただ男女が自分に話しかけてくるような

とても優しく懐かしいような

ただ記憶にない不思議な夢


この夢を見た時は決まって眠れなくなり、どうしようも無い孤独感に襲われる


夜風に当たりながら煙草を1本吸う

そうして気を紛らわせる


「…白雪…明日は帰ってくるかな…」


白く柔らかな髪の小さなララフェルの姿を思い出しながら夜明けを待つ



___________



「コルト!ただいま!お腹すいちゃった!」


「…!白雪!おかえり!」


思わず小さな身体を力いっぱい抱き締めてしまう


「…ちょ…!!コルト…!痛い!!!」


「……?あ…ごめん!つい!」


すぐに身体を離し、そっと頭を撫でて微笑む


「もうっ!私だって大人なんだから!子どもみたいに扱わないでって、いっつも言ってるのにー!」


「ごめんごめん!気をつけるよ」


頬を膨らませる白雪に微笑むコルト

どこか寂しく酷く疲れているような顔をしている事は白雪には分かる


以前も似たような事が何度かある

その時に過去視で視てしまった彼の過去


彼は幼い頃の記憶が無い

思い出して欲しくない

思い出してしまったら彼はどうなってしまうのだろう



しゃがんでいるコルトに一生懸命背伸びをして頭を撫でる


「白雪?」


「…私が居なくて寂しかったでしょ!よしよし!」


「……あぁ…寂しかったよ…帰ってきてくれてありがとう…白雪大好きだ!」


そう言うと今度は優しく抱き締める


「ッ…!!!あ、あのねぇ!!!女の子に対してすぐ大好きとか…頭撫でるとか、優しいのはわかるけど、そういうのやめなさい!!」


「??何で?俺は思った事言ってるだけなんだけど…」


「はぁ〜〜…だからコルトはそうやって…はっ…」


大きな溜息をつきながら言葉を発しようとしてハッとする白雪


前にふとした時に視た過去視で、出会う前のコルトのプライベートな過去を視てしまった事を思い出し顔を真っ赤にする


「ど、どうした白雪!?顔が真っ赤に!?熱でもあるのか!?」


コルトが触れようとすると、手を振り払って部屋の奥に走って行き、閉じこもってしまった


「コルトのバカぁ!!!!」


「え!?!?」


「ばかばかばかばかばかーーー!!!」


「し、白雪!!ご飯できてるんだけど…!」


「知らない!!!もう!!コルトのバカ!!!」


「えぇ…馬鹿でごめんな…?」


過去視は自分の意思とは関係なく視たくないものまで視えてしまう

光の戦士でいるのも大変な事だ


コルトは賑やかな日々がこれからも続いて欲しいと願う

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記憶 Kolto @kolto441

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