我が名は月光GEKKO

🍱幕の内🍱

第1話 百目鬼(栃木)

我が名は月光GEKKO


大月輝善は謎の少女失踪事件を調べるために栃木県鹿沼に来ていた。

彼は大学で犯罪学の教鞭を取っているために未解決事件や猟奇事件に関する専門家として取材や研究依頼も多い。

今回は鹿沼で起きている連続して発生した少女失踪について調査依頼を受けた。

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登場人物

大月輝善(48) 大学で犯罪学を教えている

西園寺もも(30) フリージャーナリスト犯罪記事の相談を大月にしにくる


西郷警部(60) 猟奇事件捜査を指揮する警部


天狗 妖怪達のリーダー

百目鬼 完全復活のために美少女の生贄を欲している

河童 妖怪団のしもべとして働いている


キャンプの少女A

キャンプの少女B


囚われの少女A

囚われの少女B

囚われの少女C


捜査員


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○部屋 深夜

   窓から満月の光が差し込む。

   窓辺に怪しい人影。

   少女の寝顔

   少女影に気づく

   怯える少女

   窓から見える満月

○タイトル『我が名は月光(GEKKO)』

○鹿沼郷土資料館内

   大月輝善(48)は展示物を熱心に見ている。

   同行しているジャーナリスト西園寺もも(30)は呆れた面持ちでその様子を見ている。

西園寺「先生、観光に来たわけじゃないですよね、事件現場とか地元警察とか最初に行かなくて良いんですか?」

大月「ん、ああ、あとで」

西園寺「あとでって……」

大月「ももさん、僕の仕事はなんだか知ってますよね?」

西園寺「ハイハイ。先生は、大江戸大学法学部犯罪学の教授です」

大月「そして、現在の研究は?」

西園寺「もう、未解決事件とその土地に残る妖怪伝説の起源」

大月「そうです。よくご存知のようで」

西園寺「先生が、妖怪オタクなのは私が学生の時から知ってますけど……今日は私の仕事も兼ねてるんですよ。そこを忘れないでください。私だって今回の神隠しの件を記事にして一人前のライターとして認めてもらえるように頑張るんですから、先生だって全力で協力してくれるって約束してくれたじゃないですか」

大月「そうです。その通りですよ。だからこうして調査にきてるのです。そうだ、ももさん、今日の月齢ってわかりますか?」

西園寺「えー月齢って。ちょっと調べますけど、なんか関係あるんですか?」

大月「ふふ、そうだそろそろお腹が空きましたね」

   大月、歩き出す

西園寺「ちょっと先生、待ってください」

   二人が展示物の前から離れる

   展示物の妖怪百目鬼(どうめき)が残した爪

   その爪が微かに動いているように見えた

声「百目鬼は栃木県に伝わる妖怪で、百匹の鬼を従えていた鬼が鬼の世界が嫌になりそこから抜け出したいと願いその願いを叶え人間になったお礼に爪を置いていったという」

○公園のテーブル

   資料を見ている大月

   弁当を二つ手にして戻ってきた西園寺

西園寺「はい、先生」

大月「おや、これはシウマイ弁当じゃありませんか。なんでまた」

西園寺「あ、先生ご存知ないんですね。あの横浜の有名なシウマイの創業者はここ鹿沼の出身なんですって、だから鹿沼ではシウマイに力を入れて日々美味しいシウマイを作っているらしいです」

大月「ほう……」

西園寺「そうだ、先生はデザートにはいちご大福とハニージェラートどっちにします?」

大月「いや、もうお弁当だけで十分だよ。ところでさっきどうして月齢を聞いたかというと……」

西園寺「満月に狼男が出るとか」

   冗談をいったつもりで笑う西園寺

大月「いや、まんざら笑い事でもなくて、狼男の例もそうだけど、思っている以上に月というのは生物に影響力があるんだよ」

   西園寺、ハニージェラートを食べながら聞いている

   話を続ける大月

大月「海の潮の満ち引きも月が影響しているし、女性のカラダだって月の周期と言われているし、英語で狂気を表す言葉はルナティックっていうからね。今回の件も毎月満月の前に神隠しが起こっている」

西園寺「そして今日はその満月」

大月「何か起こるかも知れないから十分に注意しよう」

   真剣に耳を傾ける西園寺

○天狗団アジト 夕方

   横たわる百目鬼

   周りには河童たち

   百目鬼を見下ろす天狗

   うめく百目鬼

天狗「足りないのだ!この百目鬼のうめきが聞こえるであろう!しもべたちよ。足りないのだ、清らかな人間の少女の血が!」

   うめく百目鬼

天狗「満月ととも百目鬼の美しさを蘇らせるのだ。そして我らの世界を取り戻す時が来るのだ。人間どもにしいたげられた妖怪の世界を我々が今取り戻すのだ」

   河童たちが応える

天狗「さあ、しもべたちよ。満月はもうすぐだ。ここに生贄を捧げよ!」

   次々に消え散る河童たち

○河原

   バーベキューの後片付けをしている二人組の少女

少女A「すっかり遅くなっちゃったね、急がないと……」

少女B「この辺て河童が出るらしいよw」

少女A「やだー、もう。さらわれないうちに帰らないと、もうすぐ日が暮れちゃう」

少女Bの表情がこわばる

少女B「あ、あ、あそこ……」

少女A「何よ、もう、そんな小芝居良いから早く片付けましょう」

少女B「きゃー!」

   二人の周りに河童達が出現する

○キャンプ場

   焚き火の準備をしている大月と西園寺

大月「今、河原の方から悲鳴がした、急ごう」

西園寺「確かに女の子の悲鳴でした、急ぎましょう」

○河原

   河童達に襲われさらわれそうな少女達

   そこに登場した大月と西園寺

   大月は河童を押し除け少女たちを救出

大月「ももさん、彼女達を頼む」

   西園寺に二人を託し大月は逃げる河童達を追って森の中へ

○森の中

   逃げる河童達

   追う大月

   満月の光が大月の胸元の勾玉を照らす

   大月呪文を唱える

大月「(呪文)」

   光に包まれた大月がGEKKOへと変身

   河童達とともに百目鬼のいるアジトへ

   そこには失踪した少女たちの姿が

月光「ようやく見つけたぞ!」

   次々と襲いかかる河童たち

月光「少女たちを返してもらう」

   うめく百目鬼

天狗「おのれ!邪魔をしやがって……あと少しで完全復活させられたのに。ううっ、しかたあるまい!(呪文)」

   百目鬼のうめきが強くなり火柱に包まれる。

   炎の中から妖艶な百目鬼が現れる

   百目鬼と月光の戦い

   ギリギリで百目鬼の妖術をかわす月光

   月光が満月を背に決めポーズで呪文を唱える

月光「(呪文)」

   胸の勾玉から閃光が放たれ百目鬼を包みこむ。

   百目鬼から妖気が飛び散り、百目鬼から人間の女性に変化し地面に崩れ落ちる

   女性を抱きかかえ天狗を見る月光

月光「罪もない人間を脅かす、お前達妖怪を許すわけにはいかない」

天狗「何を抜かす、人間よ。罪もない世界を脅かしているのはお前達人間ではないか、我々は人間によって汚された世界を元の世界に戻してやる。必ずな。美しい世界に戻すためにはお前ら人間はいらないのだ」

   遠くからサイレンの音

天狗「お前とはいづれまた会うだろう。覚えておこう」

月光「ま、まて……」

   飛び去る天狗

   響く天狗の高笑い

○河原

   森から少女たちと女性をつれて出てくる捜査隊

   なかなか出てこない大月を心配する様子の西園寺

   最後に出てきた警部が西園寺に話かける

警部「ご協力ありがとうございました。無事に失踪者全員保護することができました」

西園寺「あの……もう一人いませんでしたか?」

警部「いえ、あの森の中にいた人間は全員連れて来ました。残っている人はいません。あなたも今日はゆっくり休んでください」

西園寺「そ、そんな……」

   途方に暮れていると足を引きずり近づいてくる影

大月「あ、なんか解決したみたいだね」

西園寺「え?何をしてたんですか?」

大月「あ、いや追っかけてたら途中で木の根かなんかにつまずいたみたいで、このありさま。かっこ悪ね」

西園寺「もう、心配しました。だって、大月先生だけ帰ってこないんだもん。ここから一人で帰れないし、また変なのが出てきたらとか……」

   ホッとしたのか言葉が溢れ出す西園寺

大月「ああ、ごめん、ごめん、心配してくれたんだね。ありがとう」

西園寺「もう、本当に先生が心配でもう、(泣き出す)」

   歩き出す二人

   振り返り満月をみる大月

   満月の空

天狗の声「我々は人間によって汚された世界を元の世界に戻してやる。必ずな」

○部屋

   月明かりの中でピアノを弾く大月

   ベートーベン月光の曲

○エンドタイトル

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