第18話 まさかあいつも

「お父さん、ここどこ?」


「見たところ……洞窟だな」


 そりゃ、洞窟にテレポートしないって、言ったからね。


「じゃあ、この奥にいるのかな」


「たぶんそうだろう……な?」


 な~んで、佐藤は不安げなんだ?

 ブレサル、訊いてみてよ。

 お父さん、どうしたのって。


「え~、めんどくさいよ~」


 むむっ。

 今日は素直じゃないな。


「あ~、この石きれいだね!」


 ブレサルが、足元の石を拾う。

 緑色に光っている。


「それ、なんだっけ」


「たぶんピオリムだな」

「むか~し、採取依頼があっただろ?」


「あ~、そんなこともあったね~」

「あのときは、ギルド職員に殺されて……」


「ん?」

「それは、ホロソーの洞窟だろ?」

「今いるのは、ケスカロールの洞窟だぞ?」


「え、でもでも!」

「この石があるのは、ホロソーだよ!」


「……たしかに」

「ジェクオルがいるのは、アルカンステラの洞窟だったな」


 ということは……。


「ねー、どういうことー?」


「ふはははは!」

「よく来たな、勇者一行よ!」


 この声は……。


「さあ、勝負をつけようじゃないか」


「ホロソーの洞窟……ってことは」

「お前はロイエルか!」


 そういえば、そんな奴いたね。


「喰らえ!」


「うおっ!」


 暗闇から、剣が振られる。

 佐藤は間一髪で、避ける。


「シャロール!」


「うん、佐藤!」


 話術だな。


「がんば……れ……?」


 シャロールの声が、途切れた。


「お、おい、どうした!」


 焦る佐藤。


「おいおい、勇者」

「以前の戦いを忘れたのか?」


「以前……?」

「たしか……」


「俺の隷属魔術だよ」


「あ!」


 操られるやつだね。


「勇者も、とんだマヌケだな!」

「忘れちまうなんて!」


「く、くそ!」


「シャロール、そいつを捕まえろ」


 シャロールは、隣にいるブレサルを抑えつける。


「ぐっ!」


「ブレサル!」


「こいつは、人質にとった」

「剣を捨てるんだな」


「くっ……!」


――――――――――――――――――――


 ブレサル、いいことを教えてあげよう。

 アイツにバレないように聞けよ。


「……なに?」


 後ろに手を伸ばしてみて。

 そこにお母さんのしっぽがあるはずだ。


「うん、ある」


 ブレサルの手の甲に、触れる。


 私が合図をしたら、それを思いっきり掴むんだ。


「……いつ?」


 お父さんが後退りしながら、近づいてきてるだろ?


「うん」


 助けようとしてるはず。

 剣を置く瞬間に、合図をする。

 そしたら、お父さんの方に走るんだ。


「わかった」


 もう少し……もう少し……。


 今だ!


 ブレサルがしっぽを握りしめる。


「はにゃあああぁぁぁん!」


 シャロールが膝から崩れ落ちた。

 拘束が解ける。


 走れ!


「お父さん!」


「ブレサル!」


 ブレサルは、佐藤に抱きつく。

 そして、佐藤もそれを受け止める。

 しかし、後ろからはロイエルとシャロールが。


「ブレサル、これを母さんに飲ませろ!」


 佐藤は、瓶を手渡した。

 おそらくあのポーションだろう。


「うん!」


「僕は、あいつを倒す!」


「この卑怯者!」


「お前が言うのかよ!!」

「ブレサル、頼んだ!」


「うん」


「捕まえる……」


 シャロールが再びブレサルを人質に取ろうと、手をのばす。

 ブレサルはそれをしゃがんで避ける。


 しかし、問題が。


 シャロールに隙がないのだ。

 隷属魔術のせいか、普段よりシャロールの動きが強化されている。

 さらに、ブレサルの身長ではシャロールの口に手が届かない。


「じゃあ、どうすりゃいいの!?」


 もう一回掴んだら?


「……さっきの?」


 うん。


「お母さん!」


 ブレサルは、シャロールの股をくぐって、後ろに回り込む。

 そして、掴む。


「あああぁぁぁぁんん!」


 ブレサル、あんまりやりすぎたら、この作品がBANされるぞ。


「え? なんて?」


 いやいや、そんなことより、ポーションだ。


「わかってる!」


 ブレサルが、へたり込むシャロールに向き合う。

 二度に渡るしっぽ掴みで、すっかり呆けている。

 そこにポーションを突っ込む。


「んぐ! んぐぅ!」


 なんか絵面がアウトなんだよな……。

 まあ、これは小説だから、私が描写しなければ大丈夫!


 てか、佐藤は今頃、どうなってんの?

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