第3話 ブレサルの初依頼
「お母さん、ギルドで依頼受けてきていい?」
ブレサルは朝ごはんをモグモグ食べながら、尋ねる。
「ダメよ」
しかし、シャロールはなぜか否定する。
「ブレサルには、お父さんから特別な依頼をもらっているのよ」
特別な依頼?
一体佐藤はなにを?
「はい、これ」
シャロールはかごを差し出した。
かご……なにに使うんだ?
「ノーチル果樹園でリンゴを採ってきてちょうだい」
あ〜、リンゴ狩りね。
昔二人も行ったよね〜。
「そうなのか?」
「ブレサル、どうしたの?」
「お父さんとお母さんもリンゴ狩り行ったの?」
「あ〜、そんなこともあったわね」
シャロールは、少し焦っている。
なにか恥ずかしい思い出でもあったかな。
「でも、今回は一人で行くのよ」
「俺……一人で?」
一人か。
「ええ、そうよ」
「冒険者になったんだからできるわよね?」
「うん!」
こうしてブレサルは一人で家を出た。
初めてのおつか……依頼だ。
――――――――――――――――――――
「う〜ん、大丈夫か?」
「心配だね」
ブレサルのあとをつける二人組。
彼らは兄弟。
名前はノーブとホープ。
かつて佐藤やシャロールを困らせたりもしたが、今は改心して仲良くしている。
今回はシャロールに頼まれて、ブレサルをこっそり監視する役を与えられている。
「あいつ、武器屋の前で立ち止まってるぞ?」
「剣を見てるね」
「どうする?」
キラキラした目で武器を見ているブレサルは動きそうにもない。
「早く行け!」
ノーブが小石を投げる。
それはキレイな放物線を描き、コツンとブレサルの頭に命中した。
すると、ブレサルはハッとしてまた歩き始めた。
「まったく世話がやけるぜ」
「昔のお兄ちゃんみたい」
「なにを〜!」
――――――――――――――――――――
「こんにちはー!」
ブレサルは果樹園の正面にある大きな建物のドアを開ける。
「いらっしゃいませー」
「あら、ブレサル君じゃない」
受付をしている彼女の名はオリーブ。
何度か果樹園を訪れているのでブレサルとは顔見知りだ。
「リンゴ採ってきていい?」
「いいけど……今日は一人なのね」
「うん!」
「お母さんに頼まれた」
それを聞くと、オリーブはニッコリ笑う。
「それじゃあ、サービスしてあげるわ」
「わーい!」
ブレサル、大喜びだ。
あれ、そういえば……。
お金は持ってるのか? ブレサル?
「え?」
――――――――――――――――――――
「あーーーー!!!」
そのころ、シャロールが家で叫ぶ。
ある重大なことを思い出したのだ。
「お金渡してない……」
大人になっても、やっぱりどこか抜けているシャロールであった。
――――――――――――――――――――
「それじゃあ、一回帰りなさい」
優しく諭すオリーブ。
「ヤダヤダー!」
「お母さんに怒られるー!」
だが、ブレサルは駄々をこねてそこから動こうとしない。
「シャロール……お母さんは怒らないと思いますよ」
「だって、冒険者になったんだから……!」
冒険者だって失敗することはあるんだ。大事なのはそれを認めることだぞ。
「うう〜……」
苦い顔で唸っている。
そんなとき、ブレサルの肩に誰かが手を置いた。
「しょうがねーなー……」
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