第7話 豆狸、新しい巣穴の場所を決める

従兄豆狸まめだが案内してくれたのは、新しくできた住宅地の中にある、白い洋館でした。



『ここの主人は客の少ない日や休みの日にワシが行くと、お酒を振る舞ってくれる良い人間なんじゃ。』


『そりゃあええのぅ~♪』


『今日は店が休みじゃから、もうすぐ出て来るはずじゃぞ!』



従兄豆狸まめだの言う通り、庭で待っているとお酒と酒の肴を持った男がサンルームに出て来ました。

どうやらアレがこの家のご主人の様です。



『キュウ』



従兄豆狸まめだが呼びながらサンルームの入り口を叩くと、ご主人が近づいて来てドアを開けてくれました。



「おっ!狸、今日は仲間も一緒か?」



そう言ってご主人は、中にいる奥さんに小皿をもう一枚持って来る様に頼みます。

小皿を持って来た奥さんはお酒を呑んでいる狸達を見てビックリ。



『本当にええ人間じゃなここの主人は♪』


『そうじゃろう♪嫁の作る肴も美味しいしのう~。』


『決めたぞ!ワシここに住む事にする!』



豆狸まめだは目を輝かせて嬉しそうに言い、しばらくご主人と一緒にお酒を楽しんだ後、上機嫌じょうきげんでお寺に帰って行きました。



豆狸達が帰った後、奥さんはご主人に……



「今の狸…まるで【豆狸まめだ】ね。いくら狸は雑食性って言ってもお酒は呑まないわよ……」



それを聞いたご主人はビックリです。



「えっ!?豆狸まめだって??」


豆狸まめだって普通はイタズラ好きの妖怪らしいんだけど、この町に伝わってるのは、他とは違ってて…宿屋に居るだけで、幸せになれるんだって。」



奥さんがご主人に話たのは、この町に伝わるちょっと変わった豆狸まめだのお話でした。



「私も子供の頃にお爺ちゃんから一度だけ聞いた昔話だから、うろ覚えなんだけどね…… 」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


昔話【豆狸まめだの宿】



むかしむかし、ある街道沿いに……

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