未必のマクベスを読んで

とあるカフェ店員

マクベス

シェイクスピアの「マクベス」をインターネット検索してこのページにやってきた人には申し訳ないけれど、この記事はその「マクベス」ではなくて早瀬耕さんという作家さんの「未必のマクベス」という本を読んだ俺の感想文みたいなものだ。もしそんな人が居たら煩わしい思いをさせて申し訳ない。


あらすじを読むのは好きだけれど、自分の中でまとめるのが苦手なので割愛させていただく。申し訳ない。さっきから謝ってばかりだな。


結論を言うととても面白かった。それこそ僕の読書人生(そんなに長く無いけれど)に爪痕を残すほどの傑作だと思う。

ただ、小中学校の時に読書感想文を書くのが好きだった僕にも詳細な感想は書けない。書きたい、書こう。とは思うのだけれどそれに相応する言葉がまるで見つからない。「とても面白い」としか言えない。

本書は600頁を越える結構「厚い」部類に入る本だと思うのだけれど、それでも読む手が止まらず読み終わるまで一瞬だった。僕は週に3、4本映画を見るのだけれど、読了後の感覚は映画を見終わったようなそれにとても近かった。 けれど不思議なことに、読んでいる時の感覚はまるで音楽を聴いているような気持ちに近い。なんとも不思議な小説、「不思議なマクベス」である。


シェイクスピアの「マクベス」が戯曲であるようにこちらの「マクベス」もまた戯曲なのだと思う。まるで映画や劇のように、その小説の中を一緒に生きることを出来る。「悲劇」であり「喜劇」でありそのどちらでもない。また、「SF」でもあり「恋愛モノ」でもあり「犯罪小説」でありそして「純文学」である。


余談ではあるのだけれどこの小説のせいで、ちょっといいバーで「キューバリブレ」をどうしても飲みたくなってしまい、ついこの間飲みに行ってしまった。日航ホテルに併設するバーで僕みたいなガキがドレスコードもほとんど気にせずにロングのカクテルを飲んでいる様は、周りから見るととても滑稽だっただろう。

残念ながらダイエット・コークを持ち込んで「それで作ってくれ」とは言えなかった。今の自分はそんな身分でもないし、そんな根性もあいにく持ち合わせていなかった。それがほんの少しの後悔であったりする。また、出費的な意味でも少しだけ後悔している。同じくそれも、ほんの少しだけ。

それでも「未必のマクベスごっこ」と称して慣行したそれを楽しませてくれたのは紛れもなくこの本のおかげだろう。


僕の読書人生も価値観も(ちょっとだけお財布の中身も)変えてしまった本に出会えて僕はとても幸せだ。読んでよかったと心の底から思っている。

恐らく今後、何度も読み返すことになるだろう。そして読むたびにまたキューバリブレを飲みたくなり、宿泊もしないのに良いホテルに向かうことになるのだろう。


まだこの本を読んだことの無い幸せな人はぜひ手に取っていただきたい。そしてゆっくり自分の好きな場所で読んでほしい。気がつけばあなたもきっと澳門に居るはずだ。そして読み終わった頃に気がつけば、ちょっといいバーでキューバリブレが入ったグラスを傾けているだろう。そのキューバリブレがダイエット・コークで作られて居るかどうかは僕に知る由もないが、きっとその時間に後悔はない。


こんな素晴らしい作品に出会えてよかったとも思うし、もっと早く知っておきたかったとも思うし、まだ出会っていない状況に戻りたいとも思う。繰り返すが本当に「不思議なマクベス」である。

こんな素敵な本を書いてくださった著者の早瀬耕さんには感謝しかない。できるのならば不覚にもハマってしまったキューバリブレの代金を請求したいところではあるが、この気持ちは早瀬耕さんの次回作への期待に変えてそっと胸の奥に閉まっておこうと思う。


2018 9/23 キューバリブレを飲んだ三日後に。





この文章は先述の日に僕が書いた文章を少々添削した物です。もう何度俺は澳門に行ったんだろうか。

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