第32話 おっさん無双、再び
心を決めて剣を抜き、目前に迫った敵を迎え撃つ。まずは正面から向かってきた戦士と剣を交え、続けて二合、三合と斬り結んだ。さらに数合打ち合った後、気合を込めた一撃で、相手の手中から剣を叩き落とす。
武器を失い、たじろぐ相手に肩から突進して――くらえ、
「冒険者をなめるんじゃねえ!」
一方、俺の背後では、デュラムが槍を打ち振り大奮戦。ずんぐりとした
「何をしているメリック! その程度の相手、さっさと片づけろ!」
と、俺の戦いにけちをつけながらも、しっかり背中を守ってくれる。
自分と同じ
「――失せろ」
と、冷たく一言。敵は尖った耳の先まで真っ青になって逃走した。
ちょうどそのとき、デュラムの隣じゃ、サーラが杖を一振りし、自分より長身の戦士を殴り倒したところだった。
「やるじゃない、デュラム君。あたしも負けてられないわね――それっ!」
続けて一人、また一人。サーラに襲いかかった戦士が、次々と昏倒していく。まるで、雷神ゴドロムの稲妻にでも撃たれたかのように。
あの豪快な殴り方。魔法使いの杖っていうより、もはや
「サーラ! お前、魔法は使わねえのか?」
そうたずねてみると、魔女っ子答えて曰く、
「無茶言わないで! こんなに敵の数が多くちゃ、呪文なんか唱えられないわよ!」
とのこと。
「へっ、違いねえ……」
そこでふと、おっさんのことが気になった。いくらあの人が強くても、これだけの数が相手じゃ多勢に無勢。こういうときは、やっぱり助太刀が必要じゃねえのか。
戦いながら、周囲に視線を走らせると……見つけた。あの人、姫さんが乗る
「かかってきたまえ、ウルフェイナ王女の猟犬諸君! 心配せずとも、命までは奪わんよ! もっとも、あばらの二、三本は覚悟してもらうがね!」
〈樹海宮〉の回廊を舞台に、獅子奮迅の大立ち回りを演じるおっさん。群がる戦士たちを相手に一歩も退かず、剣を縦横に閃かせる。怒りに鬣を逆立てた百獣の王さながら、波打つ金色の髪をしきりに振るい、
「づあああああッ!」
轟然とうなりを上げ、鋭い切っ先で宙に日輪を描くおっさんの剣。七人の
「じゅ、十二人の
「一旦下がれ、迂闊に近づくな! この男、ただ者ではないぞ!」
おっさんの神業を見て、戦士たちが尻込みする。その隙を突いて、俺はおっさんに助太刀しようとしたが――うわっと! おっさんの剛剣をまともにくらった戦士たちが、次々と錐揉みしながら吹っ飛んでくるもんだから、危なくて近づけねえ。そのうえおっさん自身からも、
「気遣いはいらんよ! 私などより自分の身と――仲間を守ることに専念してくれたまえ!」
どことなく焦りを感じさせる声で、そう告げられた。
だが、開けるなって言われた箱を無性に開けたくなるのと同じで、心配するなと言われりゃ、余計に気になっちまうのが
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