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「さて。そろそろ、ゲームのルールを説明してやる」


そう言うと、礼は古惚けたテーブルに封の切られていないトランプを二組、置いた。


「使用するのは此の二組(ツーデック)のトランプのハートとスペードのカード、五十二枚とジョーカーが二枚。計五十四枚だ」


礼は一組(ワンデック)のトランプを俺に渡してきた。カジノ等で使用される一般的なトランプだった。封切り前である事を証明する特殊なテープが貼られている。


「封を切って、ハートとスペード。其れからジョーカーを取り出せ」


言われた通りにする。ハートが十三枚。スペードが十三枚。ジョーカーが一枚。細工が施された様な形跡はない。礼は小瓶を二つ取り出してきた。


「ハートとスペードのカードが一組ずつ。其れからジョーカーが一枚で計二十七枚。其のカードに、香を使ってガン付け(マーキング)しろ。使用する香は其々、一つのみだ」


渡された香は、何の変鉄もない市販の香水だった。一つは薔薇の香りがした。もう一つは桜の香りがした。


「互いがガン付けしたカードを使用してポーカーをする。名付けて『ガン付けポーカー』だ。」


此の勝負、間違いなく互いの嗅覚が左右する。俺達に相応しい勝負ではあった。


だが、運否天賦の要素もかなり大きい。


「ルールは普通のポーカーで良いのか?」


嗅覚勝負を挑むぐらいだから、他に変わったルールを仕掛けてくる可能性が在る。


「通常のポーカーのルールで良い。但し、幾つか特殊ルールを加えたい」


矢張り、そうきたか。


「特殊ルールだと?」


「あぁ。通常のポーカーの様に、山からカードを取るんじゃ欲しいカードが狙えない。だから、オール伏せカードの状態で好きなカードを取れる様にしたい」


此のルールを飲めば、完全な嗅覚勝負になる。如何に場のカードを把握し切れるかが勝負の肝だ。


「もう一つのルールは?」


嗅覚勝負なら俺の絶対嗅覚は負けない。


「そっちは、大したルールじゃない。一度、使われたカードは破棄する。」


其のルールだと使用されるカードはゲームが続く程、制限される。


「一応、確認しておくがスートの強さは通常のポーカーと同じで良いのか」


「あぁ。スペード、ハートの巡で良い」


因みに、通常のポーカーだとスペード、ダイヤ、ハート、クラブの巡に強くなる。


「後はカードを取る順番だが、先攻が先に場から五枚、好きなカードを取る。其の後に後攻が取る。カードチェンジは後攻が先だ。先攻と後攻は交互に入れ替わる。ルールは以上だ。異論は在るか?」


「いや、問題ない。其のルールでいこう」


問題ない。此のルールなら、寧ろ絶対嗅覚が在る俺の方が有利なくらいだ。


「じゃあ、ゲームを始めようか!!」

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