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「貴方は誰ですか?」


目の前の彼女は、百合と同じ姿をしていた。クローンなのだから当たり前だったが、俺は内心、戸惑っていた。


此の中に、百合が居る。そう思うと、愛しさが込み上げてくる。だが、彼女の中には、ドルフィンの人格が眠っている。最も愛しい人と、最も憎しんでいる男が、彼女の中で眠っているのだ。


愛しさと切なさが混ざり合い、やり切れない思いが胸を締め付ける。ドルフィンへの憎悪の念が、更に俺を掻き毟る。


「俺の名前は香元誠慈。憶えてないかな?」


「ごめんなさい。何も、思い出せないんです」


「ゆっくり、思い出していけば良い。其の為なら、俺は協力するよ」


俺は優しく彼女に笑い掛けた。


「彼女の記憶が戻るまで、彼女を預からせてくれないか?」


「其れは構いません。イルカの事は、全て貴方に任せます。もし何か在ったら、此方の方に連絡、下さい」


アゲハから連絡先の書かれた紙を渡された。

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