猫の誘いは
@kuroinu89
第1話 工場
猫と散歩をしたときの話をしよう。
半分外で飼われている猫だ、名前はココという。
迷い込んだ猫を飼っていいかと聞いて、そのまま家の猫になっている。
外で遊んで、ご飯をしっかり食べに帰ってきている。
その日は夜遅くまで猫と勉強していた。
猫と勉強すると言っても、手伝ってくれるわけではない。
ごろごろしたり飯を要求したりしているだけだ。
あれは春の桜のころだった。
僕は近くの公園の桜を心待ちにしている、その年もそうだった。
猫は家と外を自由に行き来でき、その夜も外へふらりと出ていくのだった。
その夜は帰ってきた猫が妙に鳴きやまない、餌をたっぷりやっっても
鳴きやまないのだ。
扉の所でうろうろ鳴いてうっとうしい、散歩にでも誘ってるのだろうか?
集中力の切れてきた勉強にに区切りを付け、猫と散歩に行くことにした。
誰一人いない小道を猫が先に歩いていく。普段は猫に抜きつ抜かれつしながら
あてもなく歩き、何かに気をとられて人間の行けない小藪に入ってしまい、
散歩はお終いになることがほとんどだった。
しかし、今日は猫のほうがどんどんと前に出て歩く、寄り道もしない。
ときおりこちらを振り返ってはニャアと鳴き、ついて来いとでも言うように
うながしてくる。
そうか、どこに連れていってくれくのかい?と思っていると、工場の敷地に
入っていく。
「おいおい、深夜とはいえ他人の土地には入れないよ」
しかし、猫は工場の壁のすき間からするりと中に入ってしまった。
工場は真っ暗だったが、何かブーンと音がしておりまったく無音でもない。
機械だけは夜でも動いているようだ。
しかたないと家に帰り、机に座って間もないころだった。
ドーーーン!!
家の壁を揺らし、窓をビリビリと振るわす轟音が響き渡った。
「こ、これは!?爆発?いったい何が?」
次の日の新聞には
『工場が深夜に爆発。無人でアルコールで洗浄していた機械がなんらかの
理由で爆発したもよう』
とあった。
猫は爆発の後、何食わぬ顔で帰ってきて、顔などなめていただけだったが、
もしかしたら猫は僕を殺そうとしたんだろうか?
「おいおい、猫。俺はあのとき帰ってなかったら爆発に巻き込まれていたんだぞ」
と、たまに話しかけても素知らぬ顔をしている。
あれからは猫のヒゲを引っ張ったりせず、たまには高いエサをやっているのだった。
猫の誘いは @kuroinu89
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。 猫の誘いはの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます