眠ってしまいそうな速さで

月雪りこりす

眠ってしまいそうな速さで

   1

 

 カーテンの隙間から差し込んできた朝陽から逃げるように布団の中に潜り込む。目覚まし時計の鳴り響く音が耳と脳に突き刺さる。億劫になりながら目覚まし時計を何とか止める。朝になるといつも思い出すことがある。まだ私が学校に通っていた頃のこと。毎朝憂鬱で死にそうになっていた。地獄の始まりを告げる目覚まし時計、できることならば鳴らないでと願わない日はなかった。毎日が土曜日だったら良いのにと思っていた。日曜日ではなく土曜日だったら良いのにと思っていたのは、日曜日だと次の日が月曜日で心の余裕がなかったから。

 眠気に飲み込まれるようにして、二度寝、三度寝を繰り返す。何度起きても、何度寝ても、憂鬱な気持ちは変わらず、朝という現実が私を押し潰そうとしてくる。逃げるようにまた眠りにつく。

 幾度かの眠りを繰り返してようやく目を覚ます。先ほどまでとは違う起きた感覚に何度も眠りについていたのは夢だったと気付いた。眠る夢を何度も見ていた。眠ることで現実逃避し、夢の中でも眠ることでさらに現実逃避をする。現実は私にとって最大の敵だった。逃げても逃げても追ってくる。眠りを繰り返すごとに少しずつ眠りが浅くなっていって、しまいには眠れなくなり、現実から逃げる術を失う。そうしてようやく私の朝は始まる。

 朝起きて、いつも最初に思うことは、「今日もまた目を覚ましてしまった」ということだった。夜眠る時には「このまま目が覚めなければ良いのに」と思いながら眠りにつく。そんなことを繰り返して今日という日まで生きてきてしまった。曖昧にぼやけた現実の中をおぼつかない足取りで歩いてきてしまった。

 生きることは地獄で、息をするので精一杯で、生きるという強制労働で、終身刑みたいだった。死ぬことでしか逃れられない。でも、私は死ぬことが怖くて死ねないでいる。いつも消えてしまいたいと思ってはいるけれど、死にたいとは思えない。死ぬのは周りに迷惑がかかってしまうから。私が死んだ後の後処理を誰かに押し付けることになるなんて申し訳なくてできない。世界に生まれ落ちた現実を汚すごみの様な私のために、誰かの時間を無駄にしてしまうことなんてできない。

 だから私は、消えたいと思う。生きた証も、生きた痕跡も、生きていた事実さえもすべて一緒に消えてなくなってしまえばいいと思っている。

 夢の中で耳をつんざくように鳴り響いていた携帯兼目覚まし時計を探して、布団から手を出す。寝るときに枕の横に置いておいたはずの携帯が見つからない。

「あー……」

 体中に重りを付けたかのように重くなった体を無理矢理起こしてベッドの横を見てみると、ベッドから落ちた携帯があった。昔から寝相が悪くて朝起きるとベッドから自分が落ちていることも度々あった。

「ごめんね、携帯くん」

 携帯に謝りながら携帯の画面を付ける。10時30分。朝というよりはもうお昼近かった。でも、この時間に起きれたのならばまだ良い方で、目覚ましをかけていない時、酷い時は12時を回っていることもある。

 いつも通りとりあえずSNSを開くと通知が来ていた。通知を確認すると、「おはようございます。体調は大丈夫でしょうか?無理しないでくださいね。今日はよろしくお願いします」とメッセージが届いていた。今日はSNSで知り合ったソラさんと会うことになっている。急ぐほどの時間ではないけれど、待ち合わせに遅れたら申し訳なさすぎるので、寝起きで重体の体を引きずるようにして出かける準備を始める。

 朝ご飯を食べて、薬を飲んで、シャワーを浴びて、着替えて……動作一つ一つに相当な体力を持っていかれながらも何とか出かける準備を整えた。12時。待ち合わせの時間までは2時間近くある。

「歩いていくかぁ」

 既に精神的には相当な体力を持っていかれているにもかかわらず、歩いていくことにした。理由は単純で心療内科のお医者さんに運動するように言われていたからだった。セロトニンの分泌には適度な運動も大切らしかった。普段、家に引きこもっているとなかなか運動する機会がなくて、運動不足になりがちだった。日に当たらないと気分も落ち込みやすくなるみたいなので、今日は良い機会なのかもしれない。

 外に出ると春の暖かな優しい風に出迎えられた。包み込まれる様な風はまるで布団みたいな安心感を覚えた。

この世界は何もかもが作り物に見えてしまって空虚だけど、春の風はそれを少しだけ忘れさせてくれた。ワンピースの裾が風に揺れた。

 待ち合わせ場所まで歩いていると途中で桜並木を見つけた。そういえば、地元では有名な桜並木があったななんて思いつつ桜を見物する。丁度満開の時期なのか花見客が沢山いてみんな思い思いに写真を撮っていた。せっかくだから私も携帯を取り出してカメラを起動する。枝の先で綺麗に咲き誇った桜の花をカメラに収める。桜並木全体の写真も1枚撮った。満開になった桜が世界を華やかに彩っている。桃色というよりは雪の様な色をした花びらが風に舞って桜吹雪が駆け抜けていく。桜を見上げると空の青色と桜の雪色のコントラストが綺麗だった。世界はこんなにも美しいのに。私は……

 桜吹雪に背中を押されるようにして私は待ち合わせ場所へ再び歩き出す。

 

   2

 

 待ち合わせ場所には30分前に着いた。有名なハチ公像のところだけれど、ハチ公像は世間が思う以上に小さいのだ。だから、初めて渋谷に来る人がハチ公像を待ち合わせ場所にすると大抵迷子になる。ソラさんは大丈夫だろうかと思いながら人の群れを眺める。私にとって人はみんな哲学的ゾンビに見える。意思があるように機械的に動いている様な、そう、まるで作り物のアンドロイドの様な。私は私自身の心さえも疑っている。私は私というアンドロイドを操作しているような感覚が小さい頃からずっとあった。現実が現実の様に見えない、映画館で一人で映画を見ている様な感覚もまた小さい頃からずっとあった。初めて心療内科を受診したときにこれが離人感と現実感の消失であることを知った。離人症と言われていることも。

 離人症を一体いつから発症をしていたのかは分からない。物心ついた頃にはすでに世界がそういうものになっていた。離人症による疎外感はいつもあって、学校で集団の中に属していても、友達と遊んでいても、どこか独りぼっちの様な感覚がいつもあった。きっとこの感覚は一生消えないのだと思う。元気だった時も、うつ病になった今も、変わらないのだから。

 渋谷の喧騒を聞きながら空を眺めていると、ソラさんからメッセージが届いた。「ハチ公像のところに着きました。どんな服装をしていらっしゃいますか」とのこと。「黒のワンピースに赤い靴を履いてます」と返信する。周りを見渡してみると、一人、明らかに挙動不審な女性がいた。ぐるぐると回転しながら誰かを探していると思われる女性は黒い長髪に空色の目をしていた。

「あの、すみません」

「はいっ!?」

 滅茶苦茶に驚かせてしまったみたいだった。

「ソラさんですか?」

 この女性がソラさんであるという確信があった。何故なら手首に大量の自傷痕があったから。ソラさんはいつもSNSで自傷してしまったことや、鬱呟きをよくしている。中身は良い人なんだけど、良くも悪くも素直に言葉を呟いてしまうタイプみたいだった。

「驚かせてしまってごめんなさい。幽です。リアルでは初めまして」

「あっ!あっ……幽さん!良かった……怪しい勧誘とか怖い人に声をかけられたのかと思ってしまいました。幽さん初めまして、ソラです」

 予想通りソラさんで合っていた。ソラさんが照れた様に頬を少し赤くして、にっこりと優しく笑う。ソラさんのように素敵な笑顔はできないけれど、私も笑顔を返す。

「とりあえずどこかお店入りましょうか」

「そ、そうですね!」

 ソラさんの声色から緊張していることが伝わってきた。私も緊張して声が震えていた。家族以外と直接会話をするのはお医者さんを除けば久しぶりだった。

 喫茶店に着くまでの間、無言の時間が続いた。何から話したら良いか分からなかった。喫茶店に着いて席に座ってからも、どうしたら良いのだろうと思っていると、ソラさんから会話を切り出してくれた。

「い、良いお天気で良かったですね!」

「そうですね。過ごしやすい陽気で良かったです」

 会話が途切れる。フラペチーノを口にしながら次の会話を考える。すでに知り合いだけど直接会うのは初めてという距離感が難しくて、こういう時、どんな話なら話しても良いのか分からなくなってしまう。

 人と人のコミュニケーションは難しい。

 とりあえず、昨日の呟きについて聞いてみることにした。

「昨日の呟き見たんですけれど、手首大丈夫でしたか?」

「あ、えっはい!大丈夫です!いつものことなので……あはは……ご心配おかけしました」

 昨日の夜、ソラさんは「また手首切っちゃった」という呟きをしていた。癖とはいえ、自傷行為をしたくなってしまう何かがあったのかもしれないと少し心配していた。

「こちらこそこんなこと聞いてしまってごめんなさい」

「全然大丈夫です!むしろ心配してくれてありがとうございます。質の悪い感じになってしまいますけれど、嬉しいと思ってしまいました」

「幽さんこそ、うつと離人症は大丈夫ですか。辛くなったら言ってくださいね。無理は禁物です」

「大丈夫です。ありがとうございます」

 うつ病と離人症についてはすでに話したことがあった。憂鬱で世界が空虚に見えることも。

「あと、もし良かったらタメ口で話してください」

「分かりました。ではこれからはタメ口で失礼しますね。ソラさんももし良かったらタメ口で大丈夫です」

「そうですか?あふふっ何だかちょっとだけ近づけた気がする」

「良かった」

「幽さんかわいくてびっくりしちゃった」

「えっ?」

「女装姿かわいいなって思って……あと白い髪も綺麗……」

「それは……ありがと」

 今まで母に似合っていると言われたことはあったけれど、他の人に褒められたことは特になかった。

 話題として触れられることもなかった。だから、素直に嬉しかった。

「良かったら一緒に写真撮っても?」

「私なんかで良ければ……」

 タメ口で話し始めた途端にソラさんの積極性が増したような気がする。言葉の距離感は実際の距離感とも密接な関わりがあるのかもしれなかった。

 ソラさんが隣に来て携帯を構える。携帯に映るソラさんは満面の笑みを浮かべていた。私も負けないように頑張って笑顔を作った。私みたいな世界のゴミの様な奴の汚い笑顔がソラさんの携帯に保存されてしまっていいのかと思ったけれど、ソラさんが楽しそうなのでやっぱり駄目とも言えなかった。

 楽しそうに写真を撮るソラさんの隣でこの後の予定が真っ白なことに頭を悩ませていた。そもそも今日会うこと自体昨日急遽決まったことだったため、予定までは話せていなかった。ソラさんから会いたいと言われただけだった。

 だから、「この後ゲーセン行っても良い?行ったことなくて」というソラさんからの提案は助かった。

「うん。もちろん良いよ」

「あふふっやった!ありがとね」


   3


 フラペチーノを飲み干してゲーセンへ向かった。道中、ソラさんはやや挙動不審気味に周囲をじろじろと見回していた。「人混み苦手?」と聞くと、「うーん……苦手というか警戒しちゃうんだ」とのことだった。私にとってはみんな人の姿をした動く人形みたいなものだけれど、心がある人たちが歩いていると考えれば警戒してしまうのも無理はないのかもしれなかった。現実感の有無、違い。それは思っている以上に大きいものなのかもしれない。ソラさんの感覚ではこの世界はどう見えているのか気になった。

 ゲーセンに着いた私たちはまず音ゲーをしに向かった。やはりゲーセンといえばクレーンゲームのイメージが強いらしく、ソラさんはクレーンゲームを最初に遊ぼうとしたけれど、そこは止めた。最近のゲーセンのクレーンゲームは店員さんに動かしてもらわないと取れない、もしくは、かなりの金額がかかることが前提になっていることを知っていたから。ソラさんは残念そうに「ゲーセンも経営大変なんだね」と少し同情していた。

 音ゲーと言っても結構な種類がある。手元だけで遊べるもの、腕全体を動かすもの、全身を動かすもの。

 ソラさん曰く「動きの大きいものはちょっと恥ずかしい」とのことだったので手元だけで遊べる音ゲーで遊ぶことにした。

「この流れてくるノーツって言われるものに合わせてこのボタンを押す」

「うんうん」

「これは長押しのノーツ……あ、これは同時押し」

「何だか色々あるんだね」

「うん。やってみるのが一番早いかも」

 とかなんとか簡単な説明をした後、ソラさんにプレイしてもらった。ソラさんは「ノーツ速い!なにこれ!」や、「何が何だか分からないけど何か楽しい!」、「これはピアノを引いてる気になるね!」なんて楽しんでいた。あっという間にソラさんは1000円分プレイしていた。その間、私はと言えば、ソラさんの横でソラさんのプレイを眺めていた。眺めながら考え事をしていた。

 どうしても目に付くのがソラさんの自傷痕だった。ソラさんは音ゲーに集中していて私が手首から腕にかけての自傷痕を見ていることに気付いていなかった、と思う。ソラさんの自傷痕は思っていたよりも酷く、手首から腕にかけて深い傷と浅い傷がほとんど隙間なく並んでいた。ソラさんが自傷をする理由を私は知らない。快楽を求めているのか、誰かに気付いて欲しいのか、落ち着くからなのか、分からない。だけど、何か叫んでいることだけは分かったような気がした。楽しそうなソラさんの横顔を見る。自傷している時はどんな顔をしているのだろうなんて思ってしまったのだった。私はなんて悪趣味な奴なんだ。

 音ゲーで遊び終えたソラさんとプリントシール機で写真も撮った。

「目おっきいね……」

「ちょっと盛り過ぎだよねこれ」

「頭の構造大変なことになってそう」

「確かに眼球大きそう……」

 「あふふっ」なんてソラさんが笑った。

 ゲーセン内を散策しているとソラさんがシューティングゲームに駆け寄った。

「これやりたい!」

「ホラー大丈夫?」

「いじめっこに比べたらゾンビとか幽霊とかなんてよゆーよゆー!」

 比較対象がいじめっこなのはどうしてだろうと思いつつも、有名なシューティングゲームに腰掛ける。

 ゲームが始まってからのソラさんの反応は面白かった。最近のゲームでは音だけじゃなくて風が出るものもある。音や風が出るたびにソラさんが悲鳴をあげるため、鼓膜が敗れそうになった。

「めっちゃ怖いじゃん!」

「だからホラー大丈夫?って聞いたのに」

「脅かし系は別問題」

「そうなんだ……」

「でもでも、すごく楽しかった。私はリアルの友達が全然いなくっていつも一人で遊んでたから、こういうので友達と遊ぶことに憧れてたんだ」

 そんなことを言うソラさんに、私は、「じゃあまた遊びに来よう」と返す。

 「うん!」とソラさんは楽しそうに返してくれた。 

 

   4

 

 ゲーセンでひとしきり遊んだ後、私たちは渋谷の展望台に来ていた。渋谷の展望台に来るのは私も初めてだった。

 展望台から見える渋谷の街は夕陽に照らされていた。茜色の夕陽が世界を覆う様に空と街を染め上げていた。

「綺麗だね」

「うん。綺麗」

「今日はありがとね。昨日、急に言ったのにもかかわらず遊んでくれて」

「良いよ。またいつでも呼んで」

「優しいね」

「優しい?」

 昔から優しいと言われることはあった。あったけれど、優しくしようと思って優しくしていたことはない。ただ、人に嫌われるのが怖かった。敵対してしまうのが嫌だった。他人の感覚がよく分からないから余計に。

「私は優しくなんてない。ただ、臆病なだけ」

「でもさ、それでも、私から見たら優しいよ」

 「依存したくなってしまうほどに」とソラさんが続ける。

「私は学校でいじめられてて、毎日死にたいって思ってた。お母さんは一人働きで忙しいから心配させたくなかったし、学校には頼れる人はいなかったし……だから、本当は今日、死のうと思ってたんだ」

 ソラさんの顔を見ると涙が零れていくのが見えた。

「幽ちゃんは死にたいと思ったことある?」

 ソラさんに聞かれて私は。

「毎日消えたいと思ってる。死にたいと思ったことはない」、と正直に答える。

「ほら、やっぱり幽ちゃんは優しんだ。消えたいと思うけど死にたいとは思わない。それって人に迷惑をかけたくないからだよね。人に迷惑をかけずに人知れず消える。そんなこと優しい人じゃなきゃ考えないよ」

「私の様な世界のゴミみたいな奴は消えた方が良いに決まってる」

「ううん、ゴミなんかじゃない。だから、消えないで」

 ソラさんに両手で優しく手を握られる。その手はアンドロイドの様に機会の様に冷たくなくて温かかった。

「今日、ほんの少しの時間だったけれど、幽ちゃんと遊んで……思っちゃったんだ」

 ソラさんが涙を零しながら笑顔で言う。

「もう少しだけ生きてみたいって」

 ソラさんの顔は夕陽色に染まっていた。冷たくなり始めた風が頬を掠める。

「生きてみたい……」

 ソラさんの言葉を真似して口にする。

 今まで口にしたことのない言葉だった。

 だけど、その言葉はどこか懐かしくて。

「幽ちゃんの隣で夢を見たい。生きてみたいと思うそんな夢を見たい。見させてくれませんか」

 私は「夢は勝手に見るものだよ。許可なんていらない」なんて即答した。

 

   5

 

 満開だった桜の花びらも散り始めて、葉桜の季節になった頃。私はソラと一緒にゲーセンに向かって並んで歩いていた。ソラの住んでいるところから私の家まで結構な距離があるにもかかわらず、わざわざ迎えに来てくれたのだった。

「もう葉桜になっちゃったね」

「私は葉桜も好きだよ」

「葉桜は葉と花がいっぺんに見れて一石二鳥って感じ」

 「あふふっ」と笑うソラ。ソラの横顔は笑顔で楽しそうだった。

 繋がれた手。手首から腕にかけての自傷痕はあの日と比べて減っていた。どんな心境の変化があったのか、人の感情に鈍感な私にははっきりとは分からないけれど、自傷する必要性が減ったということだけは確かみたいだった。

 私はと言えば、ソラから全肯定され続けて甘やかされまくっている。

 現実感がなくて、自分の感覚も危うくて、消えたいと思うこともある。だけど、ソラの隣になら存在していても良いのかなと思い始めていた。

 それに「消えたら自殺するからな」とソラに脅されている。

 歪な関係性で構わない。病的な関係性で構わない。生きてみたいと思えたならそれはきっと間違っていない。

 空を見上げると、葉桜の間から、透き通るような青い空が、覗いていた。深呼吸一つして、ソラに聞こえないように、小さくあの言葉を呟く。隣から「何か言った?」と声がする。

 傷付きながら、消えそうになりながら、それでも、私たちは私たちの物語を歩いていく。

 ゆっくりと眠ってしまいそうな速さで。

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眠ってしまいそうな速さで 月雪りこりす @tsukiyukilycoris

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