民芸品の微笑み
「こんなことじゃダメだと思うんですよ」
目の前の男性は穏やかに怒りを滲ませました。
私は、そこまで真剣に捉えたことはなかったので、ちょっと反省。
話題は、地元の民芸品について。
会津には「赤べこ」(赤地に黒の斑点と白の縁取りをした牛の張り子人形)や、「起き上がり小法師」(3センチ位の張り子細工。下方部に重りが入っていて、倒れても何度でも立ち上がる、お正月の縁起物)といった民芸品があるのですが、男性によるとそれらが近年乱れきっているというのです。
(ちなみに男性は、職人さんではありませんが、趣味とはいえないレベルで民芸品に造詣が深い方です)
私が小さい頃は、赤べこも起き上がり小法師も、伝統色の赤・白・黒で色付けされたものしかありませんでした。
今は、青に黄色にピンクに緑に金色に! 実に多彩です。そして、小法師の表情も淡白なものではない、福々しいにっこり顔のものが多く並ぶようになりました。
けれど、赤は魔除けの赤だったり、従来の素朴な表情にも意味があるようです。
「…… 小法師の目は、あんなじゃないんです。見る人の心によって、笑顔に見える時もあれば、そうでない時もある。そういうものなのに……」
と男性は嘆きます。
私は、伝統ある民芸品とはいえ「古臭いと」言って見向きもされず、廃れてしまうのも勿体無いので、時代に合わせて工夫を凝らし、モダンになったりカラフルなものが生み出されるのは悪い事では無いと思います。
けれど、伝統とは縁遠い海外の工場などで、本来の意味も持たされないまま、一般のキャラクターグッツと同じように大量生産されているというのも、確かに寂しさを覚えます。
どっちつかずの考えで申し訳ないです…… 伝統の民芸品を残していくのって難しい💧
件の男性ほど熱い想いは持っていない私は、単純に地元の民芸品が、多くの人に愛されて広がっていくのは嬉しいです。
ただ、地元の私達が本来の意味や姿を知っている。というのは大事かも知れない。我が家に飾られているほのかな微笑みを見ながら思いました。
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