第13話 「脱いで履く。これだけなのになぜだ?」

「……どう?」

「う〜ん……悪くはない。ないんだけど……なんだかなあ……」


双子と出かけた連休最終日から2日、土曜になって俺は朝から雫の膝枕を堪能していた。


「タイツってこんなもんなのか〜って感じだな。思ってたよりサラサラしてるし、スベスベしてるけど……」

「いまいち?」

「う〜ん……」

というわけで、雫はタイツを履いてきて、俺はその膝枕というわけだ。


しっとりモチモチの太ももはタイツによってガードされたが、その柔らかい質感は維持している。生地はサラサラでスベスベなんだが、これはあくまで横方向の話。縦に撫でると繊維の反発を感じる。これはこれでいいかもしれないが、雫のナマの太ももの感触に慣れきっている俺には物足りない。ちゃんと触ってみてわかったが、生地のせいか若干ではあるが表面に固さがあるような気がする。


例えるなら……そう。「ホテルのような」と書いてあったから買ったのに、使ってみたら全然ホテルじゃないパチモノクオリティだったみたいな感じ。


というかね?サラサラスベスベなら霞がいるワケ。ホテル気分を味わいたければ霞の膝枕にすればいいんだから、下位互換はいらんのだ。


「雫はどう?」

「私?う〜ん……」


膝枕はする方に負担がかかる。長い時間膝枕状態を続けてもらうためには、雫の意見も考慮の対象にすべきだ。


ということで、膝枕をはじめた当初から雫の意見も取り入れつつ、いい感じの膝枕環境を構築している。


「私もいまいちかな〜。寒くならないのはいいけど、いつもの感じがしなくて変な感じ」

「いつもの感じ……?」

「うん。もっと薄いのにすればいいのかなあ?」

「いや、それにカネをかけるのはやめよう。カネがいくらあっても足りなくなる」

「ん〜」

納得してないらしい。

「霞が持ってなかったかな……?ちょっと待ってて」

そう言って雫は部屋から出て行った。



しばらくすると色違いのタイツをいくつか手にした雫が戻ってきた。


「あったから試してみよ?」

「勝手に持ってきて大丈夫なのかよ」

「一応メッセージは送っといたから大丈夫」

送っといた……?それってOK出てないってことでは……?


俺の不安をよそに、雫はスカートとタイツを脱いでしまった。俺の目の前で。


「スカートまで脱ぐのかよ」

「だってどうせ着替えるじゃん」


雫が手に取ったのは、見た目は同じ色でもさっきより少し薄手のタイツ。肌の色が少しだけ強くなった気がする。


雫はそのまま座ると、「どうぞ」とばかりにペシペシ太ももを叩いた。

パンツとタイツだけの女の子に膝枕を催促される……こんなことがあっていいのか?


ちなみに今日の雫のパンツはシンプルな白。完全な無地。タイツの検証をするために余計な邪念を入れないようにする配慮がさすが雫である。


それにしても白のパンツに黒のタイツはコントラストがすばらしい。雫自身は考えていなかったかもしれないが、思わぬ産物だ。これはこれでアリ。

問題は膝枕だが……どうだろう?


「?どうしたの?」

なかなか動かない俺に雫が首を傾げた。

「いや、なんでもない」

俺は雫の太ももに頭を乗せた。


「う〜ん……」

手触りはさっきと変わらない。強いて挙げるなら薄くなった分、感触も履いてないときのそれに近くなった……気がする、ってくらい。正直あんまり変わってない。


結論、イマイチ。

いや、ダメってわけじゃない。ナマの感触に慣れきった俺には合わなかっただけ。

タイツ好きのみなさまはそのままでいてくれ。大丈夫。アンタのそれは正常だ。


「あんま変わんねえな。雫は?」

「私もかな〜。もっと薄い方がいいのかな……?」

そう言いながら雫は履いてたタイツを脱ぎ捨てた。


「雫、次のを履く前にそのままでやってくんない?」

「ん?いいよ?」


何回もやってると感覚がおかしくなる。まだ2着目だがこのあたりでリセットしておきたい。

雫はパンツのまま座った。


今までパンツを見ることはあったが、パンツのまま膝枕ということはなかった。これはこれで新鮮だが、やはりスカートの中にこもった匂いや温度がないのは惜しい。


「やっぱスカートの中の方がいいな」

「そう……?」

「ああ」

「履いた方がいい?」

「着替えるの面倒なんだろ?いいよ」

「そう……?わかった」


雫のナマの太ももの感触を堪能して、理想のタイツ探究を再開。さらに2枚ほど試したが結果は変わらず。俺も雫もイマイチの判定。そして判定を下したものは脱ぎ捨てられた。


「これはタイツじゃなくてストッキングっていうらしいよ」

雫が次に手に取ったタイツ……もとい、ストッキングを手に取ってそういった。

「なんだそれ?違いがあんの?」

タイツとストッキングで違いがあるなんてはじめて知ったんだけど。

「みたい。霞のタンスの中に書いてあった」


え?霞のヤツそんなことしてんの……?


つーか雫さん、さっきから俺の目の前でフツーに履いてんだよ。パンツ丸出しで。なんだこれ?


いや、別に寝起きだけど下着姿だって見てるし、スカートの中でパンツだって見てるよ?でも、目の前でフツーに着替えてんのおかしくね?しかもそのまま膝枕するんだよ?

……なんだこれ?

意味わからんわ。目の前で繰り広げられてる光景だけど!


「ん。あ、これはいい感じかも」


雫は確かめるように太ももやお尻のあたりを触ってる。こういっちゃなんだが、だんだんエロく見えてきた。履くのも脱ぐのも含めて。そうは思わないか?紳士諸君。

ぷりんとした柔らかいラインがマジでいい。しかも太もももいい感じで柔らかいんだ。最高だろ。


「さっきとなんか違うのか?」

「ん~……さっきのは履いてる!って感じだったけど、これはそんなんでもない」


だそうだ。俺にはよくわからんけど。


雫は座って太ももをペシペシして俺を呼ぶ。で、膝枕。


「あ、たしかにこれは違うわ」

「でしょ?」


さっきまでのタイツと違って雫の太ももの体温を感じる。さっきまでは「確実に隔たれたなにか」だったのに、これだと遠くに太ももを感じる。


「寒い日ならこれでもいいかなあ」

なんて雫は言うが、俺はもう一声ほしいところ。

「もういっこ薄いのは?」

「持ってきたのだとこれで終わりだけど……ちょっと見てくる」

そう言って雫はパンツのまま物色しに行った。


「あったけど、あんまり変わんないかも」

履いてくればよかったのに、雫はわざわざ持ってきてここで履いてみせた。

「ん~……さっきよりもいいかも……」

「まじ?」

「ん」


というわけで膝枕。


「あ~まあ……これならって感じかな~」

「だよね。これ以上ってなると霞に聞いた方がいいかも」

雫はそういいながら履いてたストッキングを脱いでポイと投げ捨てた。


「片づけなくていいのか?」

霞に見つかったらマジギレされる気がするんだが……。

「いいよ。もう履いちゃったし」

散乱するタイツとストッキング。それを見る俺とパンツ丸出しの雫。異様な光景でしかない。


「あ、スカートの方がいいんだっけ?」

「ん?ああ」

雫がスカートを履いて、俺はその中に収まる。さすがに履いてすぐだといつもの感じとまではいかないが、それでもタイツやストッキングに比べれば圧倒的に落ち着く。あーだんだんあったかくなってきて、しっくりくるようになってきたわ。うん、やっぱコレだわ。間違いない。


やっぱ俺は慣れ親しんだ生足にスカート、その中に潜るのが一番だと確信した。


「ん。やっぱこれかなー。冬だったら履いてもいいけど、今はいいや」

「同感だ」

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