第42話 ボインとツルツル
眼福眼福。案内された部屋には、なぜか全裸の女の子が2人いた。
くるみちゃんや瑞樹ともまた違うタイプの美少女たちだ。
先に目に入ってきたのはナイスバディな女性の方だ。大人の魅力が溢れているので、年齢は25歳ぐらいだと思う。
顔立ちはどこか日本人離れしているし、その髪は金髪だった。ハーフやクォーターだったりするのかもしれない。
特に注目するべきは彼女の身体だ。
出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる。胸の大きさはくるみちゃんにも劣っておらず、しかも彼女と違って、長身であるため全身のバランスがとれている。
まさにイイ身体と表現すべき悩殺ボディだ。ハリウッドのアクション映画で主役をはれそうな美人だ。
生まれたままの姿にネックレスを身に着けている。そのネックレスには緑色の石がついていた。
くるみちゃんたちは変身に必要な魔法石を指輪として装着しているが、彼女はどうやらネックレスとしてつけているようだ。
裸ネックレスなナイスバディのお姉さん……エロい。
突然の事態に困惑する5人の中で、一番早く我に返ったのは当然俺だ。ハプニングが起きたことを理解し、現状を楽しむためにあえて何もしないことを選んでいる。折角素晴らしい光景が広がっているのだ。男として堪能すべきだろう。
「僕は大郷ネシー(おおさと ねしー)って言うんだ。よろしくねウラシマくん」
そして、次に我に返ったのが大郷ネシーと名乗ったナイスバディな女性だ。
彼女は抜群のプロポーションに自信があるのか、その裸体を隠す素振りも見せず、親指を立ててグッドのサインを作っていた。
「わわわ、ごめんね、ネシーちゃん、つるちゃん」
くるみちゃんは2人に謝罪し、瑞樹はハプニングに頭が追いついていないのか突っ立っている。
彼女たちの最適解は即座に扉を閉めることだと思うが、動揺して思い浮かばないようだ。
「~~ッ!」
つるちゃんと呼ばれたもう一人の裸の人物。小さい女の子だ。小学生だろうか。可愛らしい顔をしていて、将来はかなり期待が持てそうだが、今はただの子どもでしかない。
黄色の魔法石をイヤリングで装着しているところも、必死で大人びようとしているように見えて微笑ましい。
彼女は顔を赤くしながら腕で身体の大事なところを隠している。同じポーズをネシーという魅惑な身体の持ち主がやれば絵になっただろうが、小さい子どもの身体には色気もへったくれもない。
突然裸を見てしまって申し訳ないことをしたとは思うが、それ以上の感情は特に湧いてこない。今は隣にいるネシーの美しい裸体を目に焼きつけることで忙しかった。
「……るなです」
つるちゃんは両手を握りしめ、プルプルと震えながらなにかを呟いている。
「つるを子ども扱いするなです!」
そう激昂したかと思えば、急にこっちに向かって飛び蹴りをかましてきた。
お転婆な女の子のようだ。
当たる義理もないので身体を横にそらして避ける。
着地した彼女はこちらに背を向けて仁王立ちしながら舌打ちした。
「なかなかやるですね。ですがここからなのです!」
「つる、ストップ」
「きゃっ」
ネシーがつるちゃんに近づく。
そばに置いてあったバスタオルを拾い、自分とつるちゃんをくるむようにしながら後ろから抱きしめた。
うーむ。
ネシーは堂々と裸体をさらしていたが、今は素肌の一部が隠されていて、むしろエロスが増したように思える。
「離せなのです。つるはあいつをぶん殴るです」
「動くと見えちゃうよ?」
「ッ……見るなですこの変態!」
小さな怒れる少女が落ち着くまで、しばらくの時間がかかった。
そして2人が服を着るのを待って、改めて挨拶を交わした。
驚くことに、彼女たちは2人とも高校生であるらしい。しかもネシーが高校1年生で、つるちゃんが高校3年生だとか。ナイスバディなお姉さんが、4人の少女の中で一番幼く、ロリっ子が一番年上だ。
……恐るべき人体の神秘だ。
「本当にごめんね2人とも」
くるみちゃんが謝罪する。彼女なりに反省しているようだ。自分がはしゃぎすぎてドジしたことを理解しているらしい。
「あれは事故だったし、僕は気にしてないよ」
「つるも別に……気にしてないです」
ネシーとつるちゃんはジャージに着替えていた。魔法少女の訓練をするために動きやすい服装をしているそうだ。
つるちゃんは「気にしてます!」と言わんばかりに腕を組んで立腹しているが、まぁご愛敬だろう。
「くるみちゃんはもうちょっと落ち着きをもたないとな」
「うぅ~」
「ウラシマももっと早く目を逸らすべきだった」
「いやー、突然のことにびっくりしちゃって身体が固まっちゃってさー。あっはっは」
「ネシーの裸を凝視していたくせに」
「あっはっは」
「……はぁ」
笑って誤魔化せた……というよりは呆れられた感じではあったが、つるちゃんはともかく、凝視された当の本人であるネシーが大して気にしなかったので、瑞樹もこれ以上の追求はできないらしい。
「ところで、ここは何の場所なんだ?」
2人が服を脱いでいたからといって、この場所は更衣室という訳ではない。そもそも更衣室だとすれば、くるみちゃんが案内したりはしないはずだ。
「ここはねぇ、なんと変身練習場だよ!」
「わざわざ変身を練習するのか?」
「魔法少女にとって変身は重要だもん。いかに可愛く、かっこよく、そして素早く変身できるかどうかは死活問題だから」
この部屋では変身するところを色んな角度から動画で撮影できる。その動画を使って変身姿を自分の目で確認するらしい。
わざわざそんなことまでしないといけないとは魔法少女業も大変だ。
「魔法少女の力は精神状態に左右される。少しでもいい気持ちで変身することも大事。もっとも、私はそこまでこだわってないけど」
「えぇ~? 瑞樹ちゃんいっつもす~~~っごく時間かけて練習してると思うけど」
「……」
前に瑞樹の変身シーンを見たときも、無駄にかっこつけて変身していた。何度も練習を積み重ねないと生まれないキレがあったように思う。
瑞樹はごほんと咳き込んで誤魔化し、強引に話題をそらした。
「ところで、どうして裸に?」
「今度海に行くときに備えて、水着姿でも可愛く変身できるように練習すべきだって思い立ってね」
「急のことだったですから、水着じゃなくて下着でやることになったのです」
「はぁ……?」
「やってるうちにテンションがあがっちゃって、どうせなら裸から変身する練習もしようってなったんだ」
「あなたたちは……バカなの?」
「酷いなぁ」
「もっと言ってやってほしいです。つるは無理やりつき合わされただけなのです」
「えぇ~、あんなにノリノリだったのに」
「うるさいです」
「でも楽しかったよね?」
「……楽しくないこともなかったのです」
「もう、つるは可愛いなぁ!」
ネシーがつるちゃんを軽々と持ち上げて抱きしめた。ネシーの腕の中でジタバタと暴れながら、「離すです乳お化け!」と酷い暴言をはいている。
「相変わらず困った人たちね」
「ねぇ瑞樹ちゃん、私たちも水着姿から変身ってやつやってみようよ!」
くるみちゃんは楽しそうなことがあればすかさず飛びつく。魔法少女の姿から制服姿に戻り、うろたえる瑞樹をしり目に、名案だとばかりにシャツのボタンを外し始める。
「ちょ、ちょっと待って。そんなことする必要はない」
「ネシーちゃんたちが言ってた海って夏の合宿のことでしょ? 私たちも他の人たちに負けないように練習しとかないと!」
「それは一理あるかもしれないけど、今はウラシマがいるから」
「あっ……」
くるみちゃんと目が合う。
さすがの彼女も少し恥ずかしそうだが、「ん~」と首をひねったあと、手をポンと叩く。
「下着も水着もそんなに変わらないから大丈夫!」
くるみちゃんの背後に近づき、彼女の頭部をチョップした。
「いたっ」
「もうちょっと慎みをもて」
「痛いよもぅ~」
「嫁の貰い手がなくなるぞ?」
「そしたらウラシマさんが貰ってくれる?」
シャツのボタンを止めながら上目遣いで頼んでくる姿に、少しクラっとした。
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