机に恋文

@ibara6

第1話

「これってなんかの漫画?」


今朝学校に来てみるとそう机に書かれていた。見覚えのあるようなないような文字だなぁ。


私は西園寺奏。まぁ普通に少年マンガが好きでいたって普通の女子高生。まあ少しだけ絵を描くのが好きだから漫画家志望だったりする。昨日の3時間目、いつも通りつまらない英語の谷川の授業が暇すぎて某バレー漫画ライバル校のプリン頭君を机に描いてた。


「であるからして第二文型は主語が補語と=関係になるんだなぁ」


少し輪郭を失敗した。でもまあいっか。誰も見ないし。

そう思って昨日消すのを忘れてしまった落書きにご丁寧に矢印付きでコメントしてあった。今は補習期間だから、赤点以外の人は帰れるラッキーな時間割。

そうか、これは昨日補習でこの席を使った子が書いたんだ。


私はそっと落書きを消して「木原?」とだけ書いておいた。下手な落書きを見られたのが少し恥ずかしかったのであえてそこには触れなかった。ただ丸文字で可愛い感じだったから女の子かなぁと漠然と思った。補習受けてる女の子で知ってる子って言ったら木原くらいしかいないし。木原とは仲は良かったけどクラスが離れてからあまり話さなくなった。

けど気にしてくれてたのかな〜なんてそんなことを思った。


翌朝、またメッセージが書いてあった。

「違うよ、僕、男子」


自分のこと僕呼び!!私は若干腐女子も入ってるから案外希少価値な一人称僕男子はきっとウケとか考えてた。

でもそっかー、木原じゃないんだ、男子なんだ。


そこからしばらく私の机でのメッセージは続いた。

「じゃあ誰?」

「教えない。でも運動部」

「私と知り合い?」

「勝手に知ってる」



勝手に知ってる???なんだそれ。まあ同じ学年なんだから当たり前か。

補習期間が終わってもまだ毎日続いてた。なんでかわからないけど返事がくるから。一日一個お互いに書く。


「コロナって私たち若者にもかかるのかな」

「どうだろう、最近コロナコロナってみんな言い始めたよね」


コロナっていう病気が流行り始めたらしい。一部では学校休校とかいう噂もあるけど学校が休みになるわけないじゃない。期末テストももうすぐだし。


「君補習受けてるなら期末勉強しなきゃじゃない?あと2週間だよ」

「コロナで休みにならないかなって」

「なるわけないじゃん、学校だよ」

「それもそっか、、じゃあ今度教えて?」


びっくりした。急に?私は別にそこまで賢いって方じゃないし。教えられるほどじゃないって言うか。それより何より男の子に勉強誘われたのが初めてで。でも私も会ってみたかった。誰だか知りたかった。なんで今まで知ろうとしなかったのって??なんか誰かわからない人と机でやりとりするのが楽しくて。わざと知らないようにしてた。



「じゃあ1週間後」

「おっけー楽しみにしてるな」




でも

その約束が果たされることはなかった。


メッセージのやりとりから

6日後「国からの要請で不要不急の外出を自粛するよう指示が出ました。よって急なお知らせではありますが、学校を閉鎖し、期末テストも中止とします」


「いぇーーーい」クラス一同大喜び。

テストがなくなるなんて夢見たい。私でさえもそう思った。学校がなくなるほどってどんな怖い病気なのとも思ったけど。同時に悲しくなった。

楽しみにしてる、あのメッセージ以降なにもやりとりがなくなったのが悲しいけどどうせテスト前にには会えるんだからと思ってた。けれど明日から休みなら会えない…どうしよう。



そんな平和ボケなことを考えていた私はこれから起こる困難に気がつきもしなかった

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

机に恋文 @ibara6

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ