第4話




 婚約したことを報告すると、友人達は皆お祝いしてくれました。


「おめでとう!」

「よかったわね、セラフィーヌ」

「ありがとう」


 教室でクラスメイト達に囲まれ、婚約相手の彼について根ほり葉ほり聞かれます。貴族令嬢が平民を婚約者とするのはあり得ない訳ではありませんが珍しいことは確かなので、皆興味津々のようです。


「では、セラフィーヌは学園を卒業したら領地へ行ってしまうのね」

「もう、夜会などにも出られないのね。寂しいわ」


 貴族ではなくなるので、夜会には出られません。でも、元々私は堅苦しいのが苦手で、領地ではお転婆娘と呼ばれていましたから、貴族の家に嫁ぐよりずっといいのです。

 それに、彼——ロッドは私の初恋なんですもの。


「あのね、ロッドはすっごく素敵なの。美味しいワインを作るのが夢でね、そのためにいつも葡萄のことを勉強していて……」

「やーね。のろけないでよ!」

「いつか、彼の作ったワインを飲ませてね!」


 友人達に笑われながらも祝福され、私は幸せの絶頂にいました。


 ですが、帰宅した私は浮かれ気分が急速に落下していくのを感じたのです。


「あらあら、セラフィーヌ嬢! 聞きましたよ! 平民に嫁がされそうになっているんですって、お気の毒に!」


 何故か我が家にいらっしゃる公爵夫人に、お母様がひきつった顔で応対されています。おそらく、私が帰ってくる前に追い返そうと努力してくださったのでしょう。


「ご安心なさって! 由緒正しい子爵令嬢を平民に嫁がせたりしませんよ!」

「……先ほどから申しております通り、この子が望んだ縁談ですの。幼馴染で相思相愛で……」

「何を言ってますの! ジョセフィーヌ嬢が辺境伯へ嫁ぐというのに、セラフィーヌ嬢は平民に嫁がせるだなんて! 姉妹に優劣をつけてはいけませんわ!」


 公爵夫人は自信満々でお母様の言葉を遮ります。


 優劣をつけられている訳ではないと言っても、聞く耳を持ってもらえないのでしょう。

 ああ。なんだか大変なことになりそうですわ。


 私はがっくりと肩を落としてしまいました。

 それでもなんとか、公爵夫人に私が婚約を喜んでいるとお伝えしたのですが、公爵夫人は何故か私が無理矢理平民と結婚させられると思い込んでおり、ご理解していただけませんでした。


 うう。憂鬱ですわ……


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