第11話 神々と人類の終末戦争
【
まだ触り始めて時間は浅いものの、私は確信を持って言える。
これはあらゆる神々を凌駕する可能性がある神罰兵器であると。なぜなら竜たちの前で見せた奇跡にも等しい現象がそれを如実に物語っているからだ。
あらゆる事象、物質、あまつさえ相手の同意が得られれば生命体すらも『
【
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なんとも可能性に満ち溢れている。
「しっかりと使いこなせば……メリルの蘇生も不可能ではないはず」
だが、肝心なのはデッキと手札だ。
初期の状態でデッキは20枚あったが、今では19枚に減っている。どうやら、
「デッキから手札を5枚引いた場合、再度引き直しができるのは12時間後か」
そしてもちろんカードを1枚発動して消費しなければ、次のカードをデッキから
しかも使用したカードは24時間、つまり1日は
さて、初期の
だが、氷の中にあったメモリアの頭部は見るからに一部が
だから【
「だが、希望はある」
ここにはありとあらゆる
研究するにはここ以上に適した場所はないはず。
問題は……メモリアの首を覆っている氷が溶けてしまえば、彼女の頭部が腐ってしまう。
それだけはどうにか避けたかったので、ひとまずは彼女の頭部を
【
『【虹の
ん?
メモリアの遠い祖先には【虹の
そんな疑問を覚えていると【風水龍タカオカミ】が尋ねてきた。
『リンリから聞いてはいるが……その娘が、レイ殿が亡くした大切な者か』
『ううーむ、その小娘はどことなく懐かしき匂いがする。あれはたしか……呑気で陽気な奴じゃったの』
【暴水龍クラオカミ】の気になる発言に、俺は思わず問いかけてしまう。
「【虹の
『おおおお、そうだそうだ。メロディーンのやつじゃ』
『あやつはめっぽう曲を
『奴はもっと様々な歌に触れたいと言って、この【天骸】を離れての。あれは何千年前だ?』
『正確にはわからぬ。ただ、どこぞの人間と愛し合ったと風たちが囁いてたの』
『メロディーンと同じく、歌と詩を愛した遊牧民の奴らじゃったかの』
『レイ殿。頭に角のある人族は、大概が竜族の末裔であるぞ』
『他にも人間と交配したがる変わり
サラッととんでもない事実をこぼす二柱に驚愕せざるを得ない。
角のある人種は【
思えばメモリアの歌声も素晴らしく綺麗だと、常々感心していたが……なるほど【虹の奏竜メロディーン】の力の一部を継承していたのかもしれないな。
これほど貴重な情報をさらりと出す二柱に感謝しつつ、この千載一遇のチャンスを逃す手はないと判断する。
私は少しでもメモリア蘇生の可能性を上げるために、とある交渉をしようと踏み切った。
「二柱にご提案があります」
『なんじゃ』
『申してみよ』
「私がここに滞在中、この【天骸】にある様々な【星遺物】の使用方法やその効能を伝授いたします。もちろん、私のわかりうる範囲内で、ですが」
『それは願ったり叶ったりだが』
「また、【天骸】の所々を見る限り、老朽化が進んでいるようです。私の力が及ぶなら修復をしていけたらと」
『ううーむ。それで、そなたが見返りとして我々に望むものは?』
「あなた方の歴史と、あなた方との友情を」
『おもしろいのう』
『我々が歩みし歴史を語れと』
『竜種以外から友情を求められたのは何百年ぶりかのう』
カッカッカッと二柱の竜神は高らかに笑った。
それから喉をグルルルウゥゥと地鳴りの如き音量で鳴らしては、その強靭な
『よいぞ。友誼を交わそうではないか』
『このような風情のある客は久しぶりよの』
こうして私たちは自己紹介がてら、互いの成り立ちなどを話し始めた。
私からの紹介が終れば、二柱から『レイ殿の聞きたいことから答えよう』と言われたので、まずはこの【竜の巣】……【天骸】について聞いてみる。
「この【天骸】とは何ですか?」
『ううーむ。ひらたく言えば天空の墓所じゃな』
『天にあらゆる
「なるほど」
スケールが大きすぎて気付きづらいが、『世界の掃除機』と言った役割も果たしていそうだな。
『まあ、それは建前じゃの』
『天より落ちた
二柱の竜神は蒼穹のさらなる高み、遥か上空を見渡しながらしみじみと呟く。
空の蒼の奥には
『世界の神々と、世界の人間が争った大戦。その戦時中に、この【天骸】は建造されたと認識している』
『【魔導帝国日本】のお歴々が、【
『雨を語り、雨を喰らい、そして雨を吹く。三つの口を持つ神龍、【
『元々は【
「日本古来より祀られていた水を司る神々が……人間の味方を……?」
『神だって様々な考えを持つものじゃ』
『わしらは【
「では、その二柱の神々は今どこに?」
『あずかり知らぬ。先代の【風水龍タカノカミ】は【天骸】を襲撃してきた神々との攻防で亡くなってしまっての。わしも4代目であるがゆえに詳しい事情は継承できなかったのじゃ』
『この【天骸】がいくら【
『故に戦争の行方がどうなったかもわからぬ。じゃが、まあ……この世界の有り様を見れば、人類は敗北したようじゃの』
【魔導帝国日本】、そして神々と全人類の闘争。
それが何千前の出来事だったのか、今となっては不明である。
しかし、その軌跡を辿ることで、必ずや人間にとって新たな可能性が見いだせるのは事実。
「今や人間は神々を盲目的に信じ、奴隷人形のように従うばかりとなり果てました」
神々は自身の脅威的な神力を駆使して、人間にその力を分配する。
それに感謝した人々は主神と崇め、主神が望むままに布教活動という名の侵略戦争を繰り返している。それぞれが違う神を信じるがゆえに、己が信じる神の力を広げるために。
神々の勢力争い、その代理戦争を人間たちが行っているに等しい。
「だけどまだ、こうして【
『こやつ……話せる口じゃの』
『なかなかに面白い人間じゃ』
私は二柱の竜神と、夜が明けるまで喋り倒した。
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