古代帝国【日本】を知る最強の錬星術士~「ペテン師」と馬鹿にされ竜の巣に捨てられるも、究極カードスキルに目覚めたので神罰少女を錬成しまくります。ん? 星遺物が暴走して国が滅ぶから戻れ? だが断る~
星屑ぽんぽん
第1話 落ちた太陽
「そのボタンを! 絶対に押してはいけない!」
人間とは、かくも愚かである。
なぜなら『~してはいけない』と禁じられると、無性にそのパンドラの箱を開けたくなるのが
「そのボタンを
古代人はこの行為を『フラグを立てる』と称したらしいが……。
しかし、人間ではない、神々の血を継承する【
そう思い、私は懸命に声を振り絞る。
「ボタンを押すタイミングは、私が指示す――るッ!?」
現に私の決死の叫びは、味方であるはずのアークがせせら笑いとともに押し潰してしまった。
彼の目にも止まらぬ速さと化け物じみた筋力により、私の身体はいとも簡単にねじ伏せられ、地面へと顔から打ちつけられる。
「ぐあっ!?」
「おい、レイ。聞き間違えか? 今、お前は、【
顔面が燃えるように熱くなり、激しい痛みで意識が飛びそうになるのを寸でのところで耐える。
アークは銀色に光る筒状の先端、丸型の突起部分に指をそえながら馬鹿にするような目つきで私を睥睨する。
「
彼の言う通り私は確かに神々の概念、世界を構築する意思、
現在、人類の
それがわかっていながら静止をかけない理由などない。
「
だというのにこの男ときたら、自身のくすんだ金髪を撫で終わった後にニヤケ面で言い放ったのだ。
私の名を語り、平然と大量殺戮の引き金を弾くと。
「おい、やめろ!? 今、そんな事をしたら前線が大惨事になる! いいか、それは『
「あぁー?」
「せめて味方の前線部隊が撤退を終えてから、使用する計画だったろう!?」
「撤退を待つだなんて悠長な寝言をほざく暇があるなら、少しでも後陣の安全性を考慮しなくちゃ~」
彼の黄金に光る双眸はゆっくりと弧を描き、その美貌は悪魔のように歪む。
「これほど耳障りで不快な
アークの態度から、私の警告を受け入れる気は一切ないようだ。
その事実が、私を暗い絶望の底へと落とす。
「レイにはさぁ、この状況が見えてないのかあ? 前線は【植物人間】の大群に突破され、崩壊の物語は序章をとっくに終えている」
「あれは……【植物人間】などではない! おそらく古代の硬貨を元とした人型の星遺物だ。必ず【金属キノコ】の群生地帯で出現するのがいい証拠だ!」
「寝物語をほざくのは、ほどほどにしなよ~。あの歪な
そう、現在進行形で我々を危機的状況に陥れているのは、【植物人間】と恐れられている銅製の人型モンスター。古来より【金属キノコ】と呼ばれる謎の巨木群が発生すると、【植物人間】は尋常じゃない程の数に増殖して現れ、都市1つを滅ぼしたとの記録がいくつも残っている。
いわば厄災級に指定されたモンスターだ。
私も今回の討伐軍に参加して、この目で見るのは初めてだったが……実際に人々が必死になって剣を振り回している相手を直視して思ったのだ。
あれって、十円玉じゃね……? と。
そう、巨大樹と見まがうほどの【金属キノコ】の傘の部分は、5メル以上の大きな十円玉が一枚、そしてまた一枚と、何枚も重なった構図をしている。そして、頭頂部に近づくにつれて十円玉のサイズは小さくなってゆく。
キノコというのは胞子を媒体にして菌を増殖させる。つまり、胞子や菌に相当するのが【植物人間】であるはず。ならば【金属キノコ】さえ処理してしまえば、【植物人間】は増殖を止め、確実に仕留める掃討戦に持ち込めるはずなのだ。
「あれは十円玉と言って、と、とにかく【金属キノコ】を根っこから処理さえすれば! あれらは発生しなくなる! だから、真っ向から衝突するよりも【金属キノコ】の破壊を優先す――――ゴハッ!?」
頬を強打され、私の説明は強制的に消失させられる。
「そんなのどうでもいーんだよ。ここは【
「ダ、ダメだ! 私がどうして、その
【
「おい、レイ。武器は使ってこそ、武器だと語れる。女も乗りこなしてこそ、だろぉ?」
「【
「ほう。それほどまでの破壊力か……であるならば、この機に使わなくていつ使うんだあ? 俺様の語る寝物語に登場する女に【未使用】の三文字はないぞ~?」
「……だが、断る!」
「わかってないな~。レイに拒否権とかないし。そもそも俺様の命令を止める権威もなければ、筋肉もないだるぉー?」
わかってないのはキミの方だろうが……まるで話にならない!
対話はできないくせに、奴の狂気に染まった瞳は雄弁に語ってくる。『【
神々の血に侵された
その筆頭が、たまたまアークであっただけなのだ。
だがこの問題は、多くの命が懸かっているのだから、ハイソウデスカと容易に片付けられてしまう些事ではない。
「まーだぁ、わかってないみたいだから言うけどさあ。【
「くっ……リヒテス様はどこだ!? どうかアークを止めてくれ!」
唯一、この場での決定権を覆せるリヒテス様に嘆願すべく彼の姿を探す。
だが、既に戦場は混乱の渦であり、私達のいる後陣も慌ただしい有様になっているため彼を咄嗟に見つけるのは不可能に近かった。
「リヒテス様は前線で交戦中だ。さて、この場のみなが証人となるなあ?
「「「はっ! 【第二十二血位アーク・ビブリオン】様の仰る通りでございます!」」」
「我らが
「「「筋肉こそが正義!」」」
私は彼に迎合する周囲の味方兵に驚愕の眼差しを向ける。
だが、ここではこれが当たり前だったな……と思い出す。
どうやら、しばらく
神々の血を継ぐ【
この場には彼より、高位の
だからといって、そんな状況をいいことに指令の捏造すら厭わない蛮行に抗わない理由はない。
「私は……星の記憶を読み解き、
故にこんな暴挙は見過ごせない。
決死の覚悟でアークのやろうとしてる事を止めようともがく。もがいてもがいて、もがいても、上から押さえつけられた両手は微動だにせず、岩のように固く重いアークの身体が私の自由を奪い続ける。
「全責任は、ペテン師レイにあるから何が起きても関係ないっと~♪」
そういって彼はためらいもなく禁忌のボタンを押した。
それを契機に、ここより遥か後方に設置しておいた【
絶望的な予測は現実となり、上空に白い煙の線が一本だけ引かれる。【
――この日、大地と空は真っ赤に染まった。
それはまるで血の海が吹き荒れ、血の霧が天高く舞い上がり、血に濡れ切った大雲が空を覆い尽くすようだった。
誰もがその光景に戦慄するなか、1人だけ喜々とした笑みを携えながら地獄絵図を眺める奴がいた。
「わぁーお、眩しいねえ……これは本当に想像以上だよ」
死の炎を歓迎するように両手を広げ、歓喜するアーク。
「新しい刺激、見たことのない光景!」
狂っているとしか言えない。
「さあーって、これで面白い物語が書けそうだねえ?」
こうして多くの同胞を失った日は――
【英雄神アキレリア帝国】において、
この殺戮の元凶はペテン師レイであると、私の名にちなんで……。
◆◇◆◇◆
【第二十二血位アーク・ビブリオン】の暴挙が、
錬星術士レイに不当なぬれ衣を着せたがために、
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