呪い文ノミライ

アリエッティ

第1話 サカノボリサカウラミ

  『ザリザリ..』

 月夜に行燈の下、筆を動かす音が漂う。

暗がりで一筆、したためるには手慣れている


「許さん許さん許さん...」

髪をずんだら伸ばした異様な女、力任せに筆をしならせ思いのままに書き記す。


「何度呪っても邪魔をする、役人共に住処まで奪われた。お陰でこんな森の中の古屋に...ふざけんじゃねぇっ!」

 人を恨み続けた挙句街を追われて迫害された女は人々に不気味と揶揄され森にある小さな小屋でより一層憎悪に磨きをかけた。行き着いた先は呪術による復讐、しかし現代では既にそれも退屈の所業。邪魔者たわけは殆ど総て殺しきり、最早既に望みは無い。


「あんた達が悪いんだよ?

わたしをこんなり怒らせるから、関係の無い時代にまで手が届いちまうのさ!」

標的を失いながらも想いは消えず、負の呪いは刻を超え現代にまで轟きうごめく。


「さぁ届け呪い文よ!

わたしの憎しみが未来をも殺すのさ!」

縦に四つ折りされた手紙に帯をくくりつけ、血を一滴垂らしたものを月明かりへ照らす。


「覚えておけ、わたしの名は...」


 

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