そんなことで

@Satoda

第1話

新しい仕事が見つかった。

自分の好きな仕事、内容は申し分なかった。

仕事するスペース内は人もいるし、コミュニケーションもある。

特に問題はない。

ただ、雰囲気が合わない。

言葉にするのは難しい。「感じ」が変だ。

狭い廊下、中が見えない木の扉だらけ。人の気配を感じるのに扉をすごい勢いで出ていく人がいる。人が見えても4,5メートル向こうにいて、脇の扉に消えていった。

最初は気にしてなかったが、それが続くと気味が悪く思えた。

10日もすると、人に逃げられているような感覚になった。

帰りの電車でふと思った

「面倒くさい」

そこからずっと頭の中で面倒くさいと繰り返す日が続いた。

毎日そんなことを思っていると、急に頭の中にイメージが浮かんだ。

20年も前の暖かい日、中学校の廊下、水をかけあう姿。

友達同士ただふざけている姿。

なんでそんなことが始まったかも覚えてない、どうやって終わったかも覚えていないようなこと。今まで全く思い出したこともないイメージ。


なんでそんな事を思い出したんだろう。

不思議に思っていた。


今更仕事で「面倒くさい」って感覚になると思ってなかった。本当に驚いている。

時間内に仕事をして帰ればいい。そう思ってきた。責任ある役職もなく、時間給で働いてきた。

必要最小限のコミュニケーションをとり、目の前の仕事をやってきた。

でも、本当に久しぶりに感じた面倒くさい感覚の種類が、学生時代に似ていたってどこかで感じた?


友達の相談に乗ったり、一緒に泣いたり、怒ったり、意味もなくはしゃいだり、悩んだり。


今、このままの頭の中で学生に戻ったらどう振舞えばいいんだろう。どんな風に友達を作ったらいいんだろう。休み時間はどう過ごす?

そんなことを思った事もあった。

そんな時代には戻れないとありえもしない事を思った事もあった。


何十年も青春なんて言葉口に出したこともないし、思った事もない。

意識もしてなかった。

自分が青春を思い出すのってそんなことなんだ。

いいも悪いも含めて青春のイメージって「面倒くさい」に集約されてる?

悲しくも嬉しくもないけど、青春を乗り切った自分を認めてあげたくなった。

明日も何かが合わないと思いながら電車に乗るんだと思う。

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