確率ほぼ0%なのに死んだことを憂いた神様が異世界転生してくれたと思ったら世紀末ヒャッハーな世界でいきなり死にそうなんですが!
蒼鳥マウス@ネコ耳
第一章 そうそう都合のいい世界に来れるとは思ってないけどなんだこりゃぁ!?
1-1 事故だ!僕はそんなに悪くない!!
目の前にはうすぼんやりとした人型。
周囲は宇宙みたいな場所。
そして自覚できた俺自身の死。
死後の世界なんだろうとうすぼんやりと考えていると、
なんか目の前の人型が土下座しだした。
「いや悪い!ほんっとーに悪い!」
どことなく軽そうな印象を受けるその声色にどこか警戒を覚えつつも、
この土下座しながら謝罪しているうすぼんやりとした人影にどう答えればいいのか思考していると。
「君ほぼ死ぬ筈じゃないのに、死んじゃったんだよ!」
などとのたまった。
「・・・はい?」
よーく思い出してみる。
なんで死んだのか。
そう、確かあれは歩道橋の階段を上っていた時。
確か少し上を上っていたミニスカートの女性が風にあおられでもしたのか、
キャッ!という短い悲鳴を発しながらスカートをおさえたらなんか落としたみたいで、
スカートに気を取られていた俺の顔にひらっと風にあおられた紙が飛んできた。
それはいい感じで俺の顔に張り付いて、慌ててそれを取ろうともがいたら、
階段で足を踏み外しておもいっきりよろけ、そのまま階段から落ちて行ったんだっけ。
確かそのあと何かに手が引っかかって階段の角に倒れこんで頭を強打したよーな。
「いやー、受け身を取るはずだった手をぼくが思わず掴んで邪魔しちゃってねー!」
どうやらこの人近くに居たらしく、慌てて俺を助けようとしてしまったらしい。
で、手を掴んで引っ張ろうとしたけど引っ張れず、
受け身が取れなくなった俺は頭を強打したと。
「ほんとは放っておけば重症ではあったけどほぼ死ななかったはずなんだよね!」
「・・・ほぼ?」
「そう、ほぼ。絶対はないよ。運命なんてものは存在しないからね!」
神様っぽいひとがなんか言い切ったよ!
だけどほぼならそうなるっていうのがだいたい分かってるんだろうけど。
「あ、存在しないといっても、だいたいの流れはあるよ。
ただ、低確率で違う流れになったりはするけど」
運命は自分の手で切り開くとかそういう類の話ですかね。
まぁどうでもいいけど。
「で、俺が本来死ぬ確率はどうだったんです?」
「聞いちゃう?それ聞いちゃうの??」
「0ではないんでしょう?
だったらあなたのせいで死んだとは限らないでしょう?」
たとえば、1割とか2割とか。
その程度の可能性で彼が手を出さずとも死んでいたかもしれないというなら、まぁ仕方ないと思う。
そっちに転がってもおかしくない確率だ。
「・・・・%」
「え、なんて?」
「・・・・・284%」
今『にひゃくはちじゅうよん』ではなく『にーはちよん』って言った??
「もっと大きな声でハッキリと!!」
「0.0000000284%だよ!!」
「ほぼ0じゃねーか!!!!!!!!!!」
ようするにほぼこの人に殺されたわけだ俺。
ざけんな畜生が。
「だ、だからこうやって謝ってるんじゃないか!
ほら、謝罪したんだからもういいでしょ!」
「自分で言うな殺人者!!!」
「事故だ!僕はそんなに悪くない!!」
●●●
お互いにゼーゼーと肩で息をしながら頭を押さえてうつむく。
「も、もういいだろう・・・・?悪かったから・・・ほんっとーに」
「もう死んでしまったものはどうしようもないんでしょ?
ならもう、どうでもいいですよ。早くあの世でもなんでも連れて行ってくれ」
「まーまー、焦らない焦らない」
息を整えながらどうどうと俺をたしなめる神様っぽいひと。
つかそういえばこの人何者なん?神様??
「そういえば自己紹介していなかったね。君のことは知ってるからそっちはいいよ。
僕は第七世界の調停者をしている・・・まぁ、君たち風に言えば神様だね」
だいななせかい??
地球のことかな?
「第七世界といっても、君が知る銀河とかの小さな規模のことではなく、
7番目の世界のことさ。銀河自体が存在しない場所なんかもあるよ」
なんとなくイメージしづらいけど、
ようするに世界そのものはいくつも存在しているらしい。
そして世界とは銀河サイズではなく、それより広い範囲をさしているみたいだった。
「平衡世界なんかも含まれるんだから管理が大変なんだよね。
ま、君が住んでいる地球が1番住みやすいもんだからちょくちょくそこで遊んでるんだけど」
遊んでる最中に俺殺されたんか。この調停者に。
「まーまー、そー怒らない怒らない。さんざん謝ったでしょ」
「はぁ・・・まぁいいです。
それより、俺に何かさせるつもりとかですか?」
「いんや、ちょこっととはいえ僕が原因で死なせてしまったからね、
せめてものお詫びに、異世界転生っていうのを施してあげようかなって」
「0.0000000284%を確殺に導いておいてよくちょこっととか言えますね。
まぁいいや、えーと異世界転生ですか。
・・・。
・・・えっ。
異世界転生・・・だと・・・」
最近話題になることが多い異世界への転生モノの漫画や小説。
俺もよく知っている。
ああいう願望が皆あるんだろうなぁとか思いながらあわよくばなんて考えたりは確かにした。
だけど現実にそれが起ころうとしている。この俺に。
だが待ってほしい。
それをしてくれようとしているのは、うっかり俺を殺した張本人だ。
都合のいい展開にしてくれるような気がしない。
「というわけで説明を終えたところで一応選択肢を与えよう」
しまった、考え事をしていて話をほぼ聞き流してしまった。
まぁ、いいや。えーと、選択肢とか言ったか?
「選択肢?」
「そう、選択肢。
一応、死んだ身だからね。このまま魂の浄化、君たちの言葉でいう所の輪廻転生を望んでもいい。
僕が示唆した異世界転生を望んでもいい。
君が好きに選んでいいよ。二択しかないけど」
元の世界に戻してほしい、というのは無理ではないにしても、
対象が俺の住んでいた世界の場合は間違いなく混乱を生じさせるという事で却下されてしまった。
というのも、当然だけどその世界では俺は既に死んでいる事。
そんな俺を戻せば死者蘇生以外のなにものでもない。
俺の世界では絶対に侵してはならない行為だそうで。
無理ではないけど、してはならない、ということだそうな。
なら異世界転生は問題ないのかと聞くと、
転生先の世界次第では転生自体がめずらしいけどありえなくないという所もあるらしく、
そういう世界になら大丈夫だということだった。
色々あるな世界。
ちなみに俺の居た地球は大丈夫ではない場所に認定されている。
過去には何度か転生した存在も居たらしいけど、
そのたびに地球規模でどえらい出来事が起きてしまっていた為だそうな。
えぐい技術革新とか起こしちゃったらしいし。
まぁ・・・どうせこのまま消滅みたいなのを待つくらいなら、
転生させてもらってもいいだろう。
それに話を聞いた感じでは、転生が珍しくない場所に移動させられるようだから、
そんな世界ならきっと剣と魔法とかのよくありがちな世界なはずだ。
そう、異世界転生モノの定番の。
「受けます」
「よろしい。では今すぐ行なう。
転生したら自力で頑張るようにね」
「はい」
調停者がどこかに電話で話しかけるような仕草をすると、俺の意識がすーっと遠くなっていく。
「次に目覚めた時は、君は新しい世界に居るよ」
じゃあね、といわんばかりの笑顔で見送られ、
俺の意識は闇に飲まれるのだった。
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