略奪愛12

後日、太田さんから成果報酬の300万円が振り込まれた。

「社長、300万円が振り込まれました。」


「おう、分かった。お疲れ。」

そう言うと、社長はヒカルに100万円を手渡した。


「ありがとうございます。ところで、アカリちゃんにはいくら支払ったんですか?」


「あぁ、150万円だよ。」


「なんで私より多いんですか!」


「だって、身体張って頑張ってくれたからね。あの演技力があれば、セクシー女優としてあっという間にトップに上り詰めるだろうなぁ。」


「確かに、あの演技力は凄かったですね。しかし、結局、太田さんは何で部下の奥さんを手に入れたかったんですかね?」


「だから興味があるなら自分で調べれば良いだろ。俺は金さえ手に入れば理由とか動機なんて、どうでも良いんだよ。」


「冷たい人ですね、社長は。


って、どこに行くんですか?」


「この件の後始末だよ。」


「後始末?」


「あぁ、行ってくる。」

社長は事務所を出て行った。




事務所を出た俺は、その足で松村さんの元に出向いた。

松村さんは妻も失い、社内でも上司の恋人を寝取り、妻を裏切った男としての噂が出回ってしまったせいで、会社を辞めていた。


地元にも奥さんを裏切った男という噂が回っているようで、今は誰も知り合いがいない地方でひっそりと暮らしているようだ。


「松村さん」

俺が声を掛けると、全く覇気のない声で『どうも』とだけ返事をした。


「元気なさそうですね。大丈夫ですか?」


「大丈夫なわけないでしょ。奥さんも仕事も一度に失ったんですから。まぁ、自分のせいなんで仕方ないですけどね。」

松村さんは自虐笑いを浮かべていた。


「本当に自分のせいだと思っているんですか?」


「え?それってどういう意味?」


「あなたには真実を知る権利があると思ってね。とりあえず、この動画をあげます。この動画を見るのも自由、見ないも自由。見た後に、何か私に役に立てることがあれば、こちらまでご連絡ください。」


そう言って俺は、動画を保存しているSDとティッシュを手渡して、その場を後にした。



1時間後、俺のスマホが鳴った。


「あの、太田に復讐したいんですけど。」


「どんな復讐をご希望で?内容によって料金は変わりますが、うちは100%の成功率なのでご安心ください。まぁ、実績は言わずとも身を以て実感されていますよね。


『人を呪わば穴二つ』っていうことわざがあるように、仕返しの場合は、料金を多少お安くしておりますので、何なりとご希望を申し付けください。」


電話を切ったあと、俺は口座に振り込まれた金額を見て思わず笑みが溢れてしまった。


「まいどあり」


略奪愛fin

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