略奪愛10
不倫事件から1週間後、4人だけの会合が開かれる事になったが、アカリに第三者として俺を参加させた方が良いと提案させ、太田さんにも『誰か冷静に場を仕切ってくれる人がいた方が何かあった時に安心できる』と賛同してもらい参加をこじつけた。
会合当日、松村夫妻は別々に待ち合わせのお店に現れた。もちろん、太田さん偽カップルも喧嘩している雰囲気を醸し出してもらった。
「で、松村さんはあの飲み会のあと、どこに行ってたんですか?」
俺は松村さんに問いただした。
「それが飲みすぎていたせいか、ほとんど覚えてないんです。」
「覚えてない?」
「はい。」
どうやら松村さんは覚えてないの一点張りでこの場もやり過ごそうとしているらしい。アカリちゃんとあの日の朝、お互いに隠し通すことを約束し、その約束が守られると信じているようだった。
『バカなやつだな、こいつ。』俺は内心でそう思いながらも、あくまで何も知らない第三者を演じた。
「まぁ、確かにあの日は凄い飲んでましたもんね。でもさすがに、どこかで眠っちゃったとしても、目を覚ました場所くらいは覚えているでしょ?どこで目覚ましたんですか?」
「あの日飲んだ駅の前にあった漫画喫茶で目を覚ましました。」
「漫画喫茶ね。その時は一人だった?」
「はい、一人でした。」
「本当に?」
「本当です。信じてくださいよ。」
松村さんは必死に訴えかけてきた。
「なぁ、お前は信じてくれるよな?」
俺に対して訴えても意味がないと悟ったのか、今度は奥さんに対して訴えかけ始めた。このまま話をしても無駄に長引くだけだと思った俺は、アカリちゃんに話を振った。
「そういえば、太田さんから聞いたんだけど、あの日アカリちゃんも家に帰って来なかったって言っているんだけど、どこに行ってたのかな?」
アカリちゃんは回答に困り、一瞬だけ松村さんに目をやるといった細かい演技を入れてきた。
「どうなの?黙っているだけじゃ分からないよ。」
俺はアカリちゃんを責める口調で問いただすと、アカリちゃんはぽろぽろと大粒の涙を流し始めた。
「ごめんなさい。松村さんに口止めされてたんですけど、もう全てを打ち明けます。あの日、私は松村さんと朝まで一緒にいました。」
「え?」
依頼人の太田さんも中々の演技を見せてくれた。
松村さんは『知らない、この子が嘘を付いているだけだよ』と、ここまで来ても知らないフリを続けるため、アカリちゃんは『これが証拠です』と言って、あの日に撮影した写真と仲睦まじい瞬間の動画を俺たちの前でさらけ出した。
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