第2ウマっ!
ポカポカ陽気の中、河川敷で寝そべるツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。
カキ―ン!
おらおら!いったぞ!
ちゃんと走れー!!
どうやら河川敷グラウンドで行われている草野球を見ているようだ。ロリポップキャンディーをカコカコ口の中で動かしながら。
「ははは。なんか懐かしいねえ。とりぷるえー時代を思い出すわー」
え?『とりぷるえー時代』?
そんな中、打者が打ったボールが彼女を襲う!
「危ない!」
「あ!お姉ちゃん!よけてーーー!」
パシっ!(ダイレクト捕球。しかも素手で。しかも片手で)
「・・・ウマっ!」
「ウマっ!」
「ウマっ!てか誰?あの人・・・」
そして何事もなかったかのように河川敷の坂のところからグラウンドのマウンドへ矢のような送球。ずどーーーん!
「あの距離であそこからあんな送球を・・・!ウマっ!」
「あのお姉ちゃん何者?ウマっ!!」
ロリポップキャンディーをカリカリ、カコカコ咥えながら坂を下り、彼女はグラウンド横の一塁側ベンチに近ずく。ちなみにベンチに屋根はない。
「おいーす。今、試合はどんな感じ?監督ぅ!」
「あ、今、最終回でうちの攻撃です(誰だろ?このお姉ちゃん。でもかわいいなあー)」
「へえー。3-4の一点差でノーアウト1、2塁なんだあ。じゃあ、1塁ランナーが逆転のランナーだね」
「まあ。でも、相手チームがここで反則みたいなピッチャーを出してきてさあー。ほら、見てよー」
彼女がグラウンドに視線を送ると、緊急登板なのか。ものすごく速い真っすぐと鋭く曲がる変化球を投球練習で見せつけるかの如く、キャッチャーに投げ込む若い投手の姿が。
「あっはっはー。俺様は去年まで社会人で投げてたからなー。今でも軟球だろうと真っすぐは140を超えるし、変化球も狙ったところに投げ込むぜー」
ロリポップキャンディー、カコカコ。そして一言。
「うーん、ダメ。顔がダメ」
「聞こえてるぞおおおおおおおお!おい!バッター早く打席に入れ!」
彼女の一言で大人げない投手がさらに大人げない球を投げる。バッターは送りバントの構えからバントをファールしてしまう。
「もー、お姉ちゃんが余計なこと言うからー」
「そう?っていうか。。。草野球で送りバントなんかするんすか?」
「まあ、ノーアウトだし。次のバッターから3番、4番とうちの主力が続くんで。うちの3番、4番ならあの投手に手も足も出ないことはないんだが・・・」
「そうなん?じゃあ、送ればいいの?」
「お姉ちゃんは簡単に言うけどね。送りバントって意外と難しいんだよ」
そんな会話をしている間にバッターは二球目もバント失敗、たちまち追い込まれてしまう。
「ああ!もう、追い込まれたからここは打たせた方がいいか。『打て』のサインだ」
「審判さーん。代打あたしねー」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおい!お姉ちゃあああああああああああああん!」
(監督さん、追い込まれているバッターさん、審判さんがあたふたしている中、彼女がバットを持って右打席に入る)
審判「君、ヘルメットを被りなさい」
「そんなのいらないよー。軟式でしょ?それにあたしのサングラスが見えないの?ヘルメットなんか被れるわけないじゃん。蒸れて禿げるよ。あのマウンドの人みたいに」
マウンドの凄いピッチャー、かっちーん。
「ハゲで悪かったなああああああああああ!!怒りの150キロ!!」
ものすごい真っすぐがインコース低めに。
「バントはストライクゾーンの一番高めに構えるのが基本。そして腕じゃなく、膝を使ってバットをコントロール。ランナー1、2塁ならサードに捕らせるも基本。だからヘッドを立てて脇を締めて角度をヘッド側の右手でコントロール。あ、そういや見たいテレビが今日の夜あるんだっけ。やべ、借りてるDVDと漫画も返しに行かないと。あ、でもレンタルは翌日の朝までに返せばセーフだったんだよねえー」
カコッ。ボールは絶妙に三塁側へ転がる。
「ウマっ!」
「ウマっ!」
「バント、ウマっ!!」
サードが何とかバントを処理して一塁へ。だが彼女は走っていなかった。
審判「一塁アウト!」
「あ、あのお。何で一塁に走らないの?いやバントはすごくうまかったけど・・・」
「へ、サインは『送りバント』でしょ?ちゃんと送ったじゃん。え?ひょっとしてあたしまで一塁に生きるバントした方がよかったっすか?それは有料っすよ。じゃあ見たいテレビがあるんで。じゃね」
「え?この試合の山場は見ていかないの?」
「興味ねえっす」
ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子。ロリポップキャンディーをカコカコ咥える女の子はバントも『ウマい』。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます