ウマ娘☆
工藤千尋(一八九三~一九六二 仏)
第1ウマっ!
(町のゲームセンターにて)
「うお!ウマっ!」
「ウマっ!!」
「ザンギで『ぐるぐるどっしーん』をあんなに簡単に決めるとは!!ウマっ!」
ツインテールの頭にサングラスを乗っけたかわいい女の子に賛辞の声が浴びせられる。ロリポップキャンディを咥えながら言う。
「ほい。次やる人ぉー」
どうやら次のチャレンジャーはいないようである。
「おい、お前いけよ!」
「馬鹿!今までどれだけの百円玉をあの娘に貢いだと思ってんだ!」
次のチャレンジャーがいないのを確かめ、席を立ちながら娘が言う。
「ほい。クレジットまだ残ってるから。好きな人やっていいよー。では!」
(町のラーメン屋にて)
あれ?さっきのロリポップキャンディーの女の子だ。
「おっちゃーん。いつものねー」
「いや、お姉ちゃんさあ。『いつもの』って毎回違うの頼んでるじゃない。今日は何にするの?」
そう言いながら『おっちゃん』と言われた店主らしき中年男が彼女の前に小皿を置く。出された小皿にロリポップキャンディーを置きながら、彼女は言った。
「そやねえ。今日は『味噌』の気分であり、『塩』の気分でもあり、『醤油』の気分でもあり。ほな『とんこつ』で。刻み玉ねぎマシマシで頼むでー」
「あいよー!(『味噌』の気分であり、『塩』の気分でもあり、『醤油』の気分でもありながら、『とんこつ』かよ!!)」
とんこつラーメンが出来上がるまで、小皿に置いたロリポップキャンディーを、まるでタバコを吸うように何度も口へ往復させ、時に灰を落とすように『とんとん』する。なんか小粋なこの娘。待つこと5分。
「あいよー!『とんこつ』お待ち―!」
味に自信満々とばかりに娘の前にとんこつラーメンを差し出す店主らしき中年男。
「ちょっとおー。あたしは『今日は味噌の気分であり、『塩』の気分でもあり、『醤油』の気分でもあり』って言うたやろー。なんで『とんこつ』なん?」
「またあー。自分で『とんこつ』の刻み玉ねぎマシマシで頼むでーって言ったでしょ?」
「あ、ホンマや。刻み玉ねぎマシマシやん。うちこれめっちゃ好きやねん!!」
「もおー。勘弁してよー」
「いただきマウス!」
そう言って、割りばしを口に咥えて上手に『パキッ』。添えられたレンゲにまずはとんこつスープと刻み玉ねぎを上手に箸ですくってやり口に運ぶ。
ゴクリ。シャクシャク。
「ウマっ!」
「ウマいでしょー?」
「めっちゃウマっ!!このとんこつスープと刻み玉ねぎの組み合わせがめっちゃウマっ!」
そして一気にとんこつラーメン、刻み玉ねぎマシマシをたいらげる娘。
「あー!ウマっ!」
そう言って小皿に置いたロリポップキャンディーを口に咥え直す。そして百円玉六枚をカウンターに置きながら言う。
「おっちゃん。お勘定ぉここに置いとくでえー。あー、ウマっ!」
「お、いつもありがとうね!毎度!」
ロリポップキャンディーを咥え、ツインテールの頭にサングラスを乗っけたこのかわいい女の子の口癖は「ウマっ!」。
そして彼女に対してかけられる言葉も「ウマっ!」。
これはそんな『ウマ娘』のお話である。
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