魔法少女はアカシアの夢を見る
鳴河 千尋
第1話 母親の言いつけ
魔術師である母親の研究部屋は、薄暗くて陰気さに溢れている。この空間が私の人格形成にいくらか影響を与えたのだろう。
そんな暗い場所に、母親のすみれは私を呼び出した。
「えりか、これは最後の言いつけです。普通の高校ではなく、魔術師学校に入りなさい」
母は私に語りかけた。
彼女の前にはテーブルがあり、そこには蝶やうさぎなどの、生き物の死体が並んでいる。死体に外傷はなく、眠っているように見える。
「もう手続きは済ませています。あとは試験を受けるだけ」
有無を言う余地は無いみたい。
「人間の肉体を捨て、いろんな生き物の体に魂を憑依させる。それぞれの肉体で生を全うし、この体に戻る。そしてまた同じことを繰り返すの」
「万物は流転する。その応用。そしてアカシックレコードへ至る鍵を手に入れる」
母は答えに満足したようで、私のセミロングの黒髪を優しく撫でてくれた。
「アカシックレコードには、人類の魂の記憶があると言われてます。そこへ至ることに意味はあるのですか?」
「意味ではなく、それが魔術師の使命なのです。次に会うときは、その意味を理解したときでしょう」
母はそう言うけれど、私にはよく分からない。何しろ私の魔術の素養は乏しいから。自信のある魔術は身体能力を大幅に向上させて戦うくらい。持たざる私に何が分かるというのか。
「私に使命を理解できるでしょうか……」
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